研究領域 | 少数性生物学―個と多数の狭間が織りなす生命現象の探求― |
研究課題/領域番号 |
23115006
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
上田 泰己 独立行政法人理化学研究所, システムバイオロジー研究プロジェクト, プロジェクトリーダー (20373277)
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研究分担者 |
鵜飼 英樹 独立行政法人理化学研究所, 合成生物学研究グループ, 研究員 (70391878)
中嶋 正人 独立行政法人理化学研究所, 合成生物学研究グループ, 客員研究員 (50432232)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 概日時計 / 少数性 / ターンオーバー制御 / 温度補償性 / CKI / 酵素基質相互作用 |
研究実績の概要 |
本提案では、哺乳類の概日時計を材料に、その正確性・頑健性・適応性をもたらす分子機構・ネットワーク機構を、ネットワーク構成要素の少数性に着目した以下の2つの問題に対するアプローチを通じて解明することを目指す。 1、「ターンオーバー制御による周期の正確性」概日リズムの周期は、その構成分子の少数性に比して正確である。本項目においては、各構成分子のターンオーバーに着目し、時計タンパク質の細胞内分子数および合成・分解速度の定量的測定を行うとともに、細胞の概日振動リズムを測定しながら各構成因子の合成速度と分解速度を制御することによって、ターンオーバー制御がシステムに与える生理的意義を明らかにすることを目指している。昨年度までに、各種時計遺伝子破壊マウスES細胞株の作製と、組み換え酵素依存的カセット交換法を用いたゲノム改変技術の高速化を整備した。本年度は、さまざまな時計遺伝子破壊マウス細胞株に対して、破壊遺伝子を再導入することによる機能相補系の構築に着手している。また、機能相補系が作動した遺伝子については、遺伝子産物の安定性を薬剤依存的に変化させる系を導入し、タンパク質のターンオーバー制御と概日周期長の関係を直接的に定量する系を構築した。 2、「タンパク質間相互作用および酵素反応特性による周期の頑健性・適応性」温度補償性と呼ばれる概日リズム周期の温度非依存性は、概日リズムにおける頑健性の顕著な例である。我々は概日リズムの頑健性が、リン酸化酵素CKIによる時計タンパク質PERIODのリン酸化と密接に関係すると考え、このリン酸化反応の解析を行った。昨年度までに酵素による基質認識および反応物の解離過程が、反応全体の性質を決める律速過程であることを示唆する知見を得た。本年度は、CKIの酵素反応諸過程を詳細に解析し、反応物の解離が律速である場合には、反応全体の温度補償性を説明できる動作モデルを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「ターンオーバー制御」に関しては、ターンオーバー制御と概日周期長の関係の直接的な検証に着手することができた。「タンパク質間相互作用および酵素反応特性」昨年度は相互作用に着目し、今年度は酵素反応の諸過程を解析した結果、それらを総合することによって温度補償性を説明できる動作モデルの構築に至った。
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今後の研究の推進方策 |
「ターンオーバー制御」に関しては、機能相補系が確立した系についてはタンパク質安定性の調節系を導入し、ターンオーバー制御と周期長の関係を定量する。また、ターンオーバー速度や分子少数性を定量するために、タンパク質量の高感度な絶対定量法の開発に取り組む。「タンパク質間相互作用および酵素反応特性」に関しては得られた動作モデルを検証するために、各反応速度パラメーターを測定するとともに、薬剤・酵素基質への変異導入によって温度補償性を崩すことを試みる。いずれの計画も得られた知見の遺伝子改変細胞での検証が必須であり、遺伝子のノックアウトレスキュー系の早期確立が重要な課題となっており、引き続き取り組んでいく。
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