研究概要 |
細菌べん毛蛋白質輸送システムは多機能性分子で構成され、各々が少数分子のターンオーバーにより機能する。本研究では、このシステムを再構築し、システムの構造を明らかにすると共に、構成要素の数、種類、エネルギー源に操作を加えて応答を観測し、構成サブユニットがターンオーバーしながら作動する機構、基質蛋白質数をモニターしながら発現系にフィードバックする機構の解明を目指している。以下に今年度の成果を記す。 ・輸送システムの再構築のために、FliO,FliP,FliQ,FliRの4種類およびさらにFlhA、FlhBの6種類の膜蛋白質を共発現するプラスミドを作成した。しかし、大腸菌内で4種類を共発現させると溶菌した。また、個々の遺伝子を別々に発現させた場合も、増殖が著しく減少あるいは停止した。一方、無細胞発現を試みたところ、FliO、FliQについて成功した。 ・FlhA-CFPのべん毛基部局在を解析した結果、FlhB,FliF,FliO,FliP,FliQ,FliRが欠損すると、局在しないが、可溶性成分のfliH,FliI,FliJが存在しなくても局在することが判明した。 ・輸送シャペロンFliT、FlgNと輸送装置蛋白質の相互作用を調べなところ、FliTがFliIの異なる場所に結合し、輸送基質の有無により結合場所が変わることがわかった。また、FlgNとFlhAの相互作用を見い出し、その部位も特定した。さらにFlgNがFliTと同様にC末領域で相互作用相手とその強さを制御することを示唆する結果が得られた。 ・細胞観察用の広範囲スキャナーおよび高速AFM/蛍光顕微鏡複合装置の設計と製作を行った。テコの原理に基づく変位拡大機構を用いて40μm×40μmの範囲を観察できるスキャナーを設計、製作した。逆伝達関数法によるスキャナーの振動抑制を行い、10秒以下の高速イメージングを達成し大腸菌の観察とリゾチームによる枯草菌の溶菌過程の観察に成功した。複合機の製作は、レンズ駆動を見直してミラー駆動による光学トラッキングを導入し、動作確認後、ミラー駆動を採用したスタンドアローン型高速AFMを試作した。
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