研究領域 | 少数性生物学―個と多数の狭間が織りなす生命現象の探求― |
研究課題/領域番号 |
23115008
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
今田 勝巳 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40346143)
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研究分担者 |
南野 徹 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (20402993)
内橋 貴之 金沢大学, 数物科学系, 准教授 (30326300)
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研究期間 (年度) |
2011-07-25 – 2016-03-31
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キーワード | 分子機械 / 生物物理 / ナノバイオ / 生体分子 / 蛋白質 |
研究概要 |
細菌べん毛蛋白質輸送システムは多機能性分子で構成され、輸送シャペロンや可溶性輸送装置蛋白質など、少数分子のふるまいがべん毛全体の構築や本数決定に大きく影響する。本研究では、このシステムを再構築し、システムの構造を明らかにすると共に、構成要素の数、種類、エネルギー源に操作を加えて応答を観測し、輸送装置の作動機構、基質蛋白質数をモニターしながら発現系にフィードバックする機構の解明を目指している。以下に今年度の成果を記す。 ・クラスII分子の輸送に固定される変異を導入した菌から、輸送能を保持した反転小胞膜系の作成に成功した。ATP添加によりFlgDの輸送が開始し、イオノフォアであるCCCP添加で輸送が停止することを確認した。また、ATP濃度に依存した輸送量の増加を観測した。さらに電子顕微鏡観察により反転小胞膜にべん毛基部体が逆向きに刺さっている状態を確認した。 ・べん毛基部に局在するFliIの数を測定し、FliI6リングに加えてFliH2FliI複合体が1~6分子程度がC ringやFlhAに局在することを明らかにした。FRAP実験からべん毛基部に組み込まれたFliI6リングはターンオーバーしないこと、FliH2FliI複合体は離合集散することを明らかにした。また、FliIのATP加水分解反応で生じる自由エネルギーはプロトン駆動力で動く輸送ゲートの活性化に利用されることを示唆する結果を得た。 ・輸送シャペロンFlgNがループ構造変化により大きく形を変え、相互作用を制御することを示唆する結果を得た。また、FlgN/FlgK複合体のFlhACへの結合親和性はFliT/FliD複合体に比べて僅かに高く、FliS/FliC複合体に比べて14倍程高いことを見出し、FlhACへの結合親和性の違いでべん毛の構築順序が決まることが示唆された。 ・高速AFMを用いた可溶性輸送装置蛋白質複合体の観察から、FliI複合体のリング形状が添加ヌクレオチドと塩濃度により大きく変化することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
安定して作動する反転膜系の作成に成功し、条件を変えた輸送のin vitro計測が可能となり、最大の目標が達成できる目途がつきつつある。
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今後の研究の推進方策 |
・ 反転小胞膜系を用いて詳細な輸送計測を行う。輸送基質に蛍光ラベルを導入し、蛍光計測が可能な反転小胞膜系を構築する。この系を用いて輸送のその場観察を行い、輸送の時系列データを取得する。 ・ また、FliK欠損株を利用してクラスIIIへの輸送切替が可能な系を構築する。これらの系に対して、蛍光ラベルした輸送シャペロンおよび輸送基質を用いて、シャペロンの役割、少数基質分子の選択輸送の機構を解明する。 ・ 可溶性成分の集合核として働くFlhAを核とし、精製蛋白質を用いた部分複合体の再構築を試みる。 ・膜融合を用いて反転小胞膜系から平面膜チップデバイスへ輸送装置の組込みを行う。 ・高速AFMで可溶性輸送装置複合体のヌクレオチド依存的な構造変化を観測する。また、反転小胞膜系を基板へ展開し、べん毛輸送複合体の直接観察および基部体を蛍光ラベルした菌体についてべん毛成長過程の直接観察を行う。
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