計画研究
大脳皮質を中心とする中枢神経系の神経メゾ回路網が認知・思考・感情・意識などの高次脳機能を実現していることに疑問の余地はないが、それらの高次機能を実現しているネットワーク動態と、その基本にある作動原理は未だに明らかにされていない。2011年度には皮質メゾ回路を解明するために以下の実験を行った。(1)大脳皮質のメゾ回路を解析するための解析ツールとして情報入力部位が可視化された遺伝子改変動物などを開発する研究:すでにER81/myrGFP-LDLRct BAC transgenic mouseを作製し、5層錐体細胞の樹状突起が可視化されたマウスを得たが、これを用いた皮質局所回路の解析の所見を取りまとめつつある。また、Gensat/NIHより精子を購入したVIP/Cre, Somatostatin/Cre IRES knock-in mouseを繁殖中である。これらのニューロンに感染させて、樹状突起細胞体あるいは軸索を標識出来るウィルスベクターを開発しつつある。さらに、Cre mouseと掛け合わせて、樹状突起を選択的に可視化するノックインレポーターマウスの作製を計画している。(2)従来の細胞内染色の手法を用いて「From one to group」に皮質の局所回路網を形態学的に解析する研究:すなわち、まず一方で、細胞内記録法・ホールセルパッチ法などにより電気的・化学的性質が調べられた1個のニューロンを細胞内染色し、特にその情報出力部位である軸索を染色する。他方で、遺伝子発現などの機能により分類された1群のニューロンの細胞体・樹状突起(情報入力部位)をゴルジ染色様た標識し、細胞内染色された軸索(From one)がI群の細胞体・樹状突起に(to group)どのように入力するか定量的に解析する。2011年度には、大脳皮質の3大抑制性インターニューロンのうちparvalbumin産生ニューロンの樹状突起細胞体が標識された遺伝子改変マウスを用いて、皮質スライスを作製して錐体ニューロンの細胞内標識をする実験を始めた。(3)多ニューロンCa2+画像法(fMCI)を用いる、あるいは遺伝子改変動物を用いて多ニューロン膜電位画像法を確立する、などして自発および刺激状況下で特定の皮質機能ニューロン群の動的反応特性を検討する研究:この部分については東京大・野村洋助教が主として分担して実行した。
2: おおむね順調に進展している
項目(1)の遺伝子改変動物の作製において、計画通りに良い動物が作製できる場合も有れば、失敗の結果もある。この点は実行してみないとわからないことなので仕方がないが、計画以上に進展しているとはいえない。項目(2)と(3)については、概ね順調に進んでいる。
2011年度は初年度なので、結果をみるにはまだまだ時間が必要である。2年目が終わるところで研究計画を見直し、必要ならば変更を加えるように予定する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (18件) 備考 (1件)
European Journal of Neuroscience
巻: 35 ページ: 838-854
10.1111/j.1460-9568.2012.08027.x
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Journal of Neuroscience
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http://www.mbs.med.kyoto-u.ac.jp/