計画研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
本研究では、酸化ストレス応答の鍵因子である転写因子Nrf2が、増殖シグナルにより機能変換を受け、代謝を変化させるという発見に基づき、代謝リプログラミングを支える分子機構として、次の2つの方向からアプローチしている。[1]酸化ストレス応答制御因子であるNrf2が、PI3K-Akt経路との間のポジティブフィードバックにより同化反応促進因子としての新たな機能を獲得する分子機構を解明する。[2]糖やアミノ酸代謝物が転写環境に与える影響を明らかにし、Nrf2の機能発現と機能変換に関わるエピゲノム制御機構を解明する。平成23年度には、がん細胞におけるNrf2の標的遺伝子の同定と、その細胞増殖における意義の検証、さらに、Nrf2の活性化が増殖シグナルにより増強されるということについての論文作成と発表を行った。論文の改訂作業で新たな知見が得られたことから、当初、平成23年度に実施を予定していたマウス肝臓を用いたタンパク質複合体精製とChIP-sequence解析に加えて、マウス胎児線維芽細胞や、培養細胞を利用できる可能性が示唆された。そこで、条件検討を追加して実施することにして、平成24年度への研究費の繰り越しを行い、マウス肝臓を用いたタンパク質複合体精製とChIP-sequence解析の検討をすすめ、同時に、培養細胞を用いた複合体精製とChIP-sequence解析が実施可能であるかどうかを検討した。その結果、培養細胞を用いた実験は、増殖シグナルが常に作動しているシステムであることから、適切でないことがわかった。そこで、当初の計画通り、肝臓を用いるべきであると結論した。また、肝臓からのタンパク質複合体精製と免疫沈降のための条件をほぼ確立することができた。
2: おおむね順調に進展している
肝臓と培養細胞を、それぞれ用いて複合体精製を実施できるかどうかの検討と、その条件の確立が達成できたので、平成23年度予算を繰り越した際の見通しについて、ほぼ予定通りに進行させられたと考えている。
今後H25年度に、いよいよマウス肝臓を用いたNrf2複合体の精製を実施する。そのために必要なプロテオーム解析は、東北大学大学院医学系研究科の五十嵐和彦博士との共同研究として実施する。現在、この詳細についての打ち合わせを進めつつある。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件)
Cancer Cell
巻: 22 ページ: 66-79
10.1016/j.ccr.2012.05.016.
Nat Chem Biol
巻: 8 ページ: 714-724
10.1038/nchembio.1018.
Free Rad Biol Med
巻: 53 ページ: 817-827
10.1016/j.freeradbiomed.2012.06.023.
Proc Natl Acad Sci USA
巻: 109 ページ: 13561-13566
10.1073/pnas.1121572109.