計画研究
[1]NRF2による同化反応制御機構 肝細胞でPI3K-AKT経路とNRF2がともに活性化しているPtenf/f::Keap1f/f::Albumin-Creマウスから内因性のNRF2複合体を精製した。条件の最適化を行った結果、肝臓を最初にホモジナイズする時点でクロスリンク試薬を添加しておくと、複合体が安定に精製できることが明らかになった。今後複合体の構成因子を質量分析により同定する。[2]代謝物によるNrf2機能の制御機構 脳腫瘍の患者検体の解析から、IDH1遺伝子変異を有する症例ではNRF2の標的遺伝子群の発現レベルが低く、予後が良好であるという結果が得られた。NRF2を過剰に蓄積しているグリオーマ由来の細胞株にIDH1 R132Hを導入すると、その増殖が遅くなり、NRF2の標的遺伝子の発現が低下、さらに、抗がん剤に対する感受性が上昇した。そして、NRF2をノックダウンした場合と同様の代謝プロファイルの変化が認められた(Kanamori et al., Neuro-Oncol 2015)。このことから、IDH1変異分子はNRF2機能を抑制するものと考えられた。そこで、こうした機能が実際の生体内でも観察されるかどうかを調べるために、IDH1 R132Hを全身で過剰発現するトランスジェニックマウスを作成した。独立の4ラインが得られ、各臓器における2ヒドロキシグルタル酸の増加が確認された。これらのマウスの臓器におけるNRF2の標的遺伝子発現レベルを検討したが、野生型と比較して変化は認められなかった。今後、同トランスジェニックマウスに親電子性物質を投与してNRF2を活性化させた場合に、その標的遺伝子発現にどのような違いがみられるかを検討する。また、同マウスをKeap1欠損マウスと交配し、NRF2の過剰状態によるKeap1欠損マウスの表現型に変化があるかどうかを調べる。
2: おおむね順調に進展している
マウス肝臓から内因性NRF2の複合体を精製するための条件をほぼ決定することができた。今後質量分析による複合体構成因子の解析を行い、得られる因子の機能解析を実施する。また、NRF2の活性化とエピゲノム変化を調べるためのChIP-sequence解析のサンプル調製が完了した。今後、次世代シーケンサーによる解析を行い、NRF2の活性化がクロマチン構造に及ぼす影響、転写の開始、伸長に及ぼす影響を明らかにする。また、IDH1変異体のテーマでは、トランスジェニックマウスの作成が順調にすすみ、今後解析を進める。平成26年度には、IDH1変異体とNRF2の活性化の関係についての論文がNeuro-Oncology誌に受理された。
[1]Nrf2による同化反応制御機構 Ptenf/f::Keap1f/f::Albumin-Cre (PK-Alb)マウスから精製した内因性のNRF2複合体の構成因子を、質量分析により同定する。同定される構成因子の機能解析を行い、NRF2の強力な転写活性化を支えるメカニズムを明らかにする。また、PI3K-AKT経路が活性化してNRF2が強力に活性化しているがん細胞において、ChIP-seq解析を実施し、NRF2に依存したエピゲノム制御を明らかにする。なお、サンプルはすでに調製が完了している。[2]代謝物によるNrf2機能の制御機構 全身性にIDH1 R132Hを発現するトランスジェニックマウスを解析し、IDH1 R132Hが、KEAP1-NRF2制御系の機能に及ぼす影響を検討する。同トランスジェニックマウスに親電子性物質を投与した場合のNRF2の安定化、標的遺伝子の発現などを指標にNRF2の機能発現の程度を調べる。また、同マウスをKeap1欠損マウスと交配し、NRF2の過剰状態によるKeap1欠損マウスの表現型に変化があるかどうかを調べる。[3]NML欠損マウスの表現型解析(中間評価以降の追加項目) リボソームRNA合成を抑制しエネルギー代謝を制御するとされるNMLの生体における機能を調べるために、NML欠損マウスの表現型解析を実施する。また、胎生致死であるという予備的な結果が得られていることから、そのレスキューのためのトランスジェニックマウスを作成し、生体での誘導的NML遺伝子欠損を試みる。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (24件) (うち招待講演 9件)
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