計画研究
エピジェネティクス機構は、刺激の受容で行われる短期応答、そして、刺激が消失した後にも刺激を受容した記憶を維持する長期応答を通して、遺伝子制御に働いている。他方、転写不活性なクロマチンに位置する遺伝子は、刺激に対して不応になり得る。この転写環境としてのエピゲノム制御には、DNAメチル化とクロマチンの形成が関わり、代謝恒常性の維持と破綻に重要な役割を果たしている。本研究では、生命素子と転写環境の観点から、DNAおよびリジン残基のメチル化・脱メチル化によるクロマチン変換に着目した研究を行い、代謝のリプログラミングの分子基盤を解明することを目的とする。LSD1ファミリーは、ヒストンH3の4番目リジン残基の脱メチル化酵素であり、生命素子のひとつであるフラビン(FAD)がその酵素活性に不可欠である。本研究の前半に、LSD1が脂肪細胞でエネルギー消費を抑制し、脂肪蓄積を促進する新規の機序を明らかにした。この成果に基づいて、肝癌細胞においてLSD1が好気的解糖と低酸素誘導性の転写因子HIFの安定化を維持していることが分かった。LSD1阻害によって、好気的解糖からミトコンドリア呼吸にシフトすることを見出した。また、もうひとつのファミリー分子であるLSD2が、肝癌細胞で脂肪代謝に重要な役割を果たすことが判明した。エピジェネティクス機構の観点から、代謝リプログラミングと病態における新しい知見を提示し、その作動原理と生命活動における意義について解明を進めた。
1: 当初の計画以上に進展している
リジン脱メチル化酵素LSD1ファミリーによるエネルギー代謝の制御について、数多くの新知見を得て、最先端の研究成果が出ているため。
本研究は、当初の計画以上に進展しているため、研究計画の変更なしに推進する。最終年度として研究のとりまとめを行う。
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