計画研究
脂質メディエーターは、ホメオスタシスの維持と免疫・アレルギー発症のバランスを司っていることが推測されるが、多数の候補脂質メディエーターの中で、どれが本質的に各免疫・アレルギー疾患に関与しているのか、さらに、ヒトでの役割の詳細について不明である。そこで、皮膚免疫・アレルギー疾患患者からの臨床検体を元に、各疾患特異的な脂質メディエーター関連のシーズを網羅的に発掘し、マウスとヒトの両方向から包括的に役割を解明することが重要課題であると申請者は考える。そこで、本研究では、アトピー性皮膚炎などの炎症性皮膚疾患をモデルとして、マウス・ヒトの見地から、脂質メディエーターの免疫・アレルギーにおける役割の解明と治療応用の基盤を形成するプロセスを確立したい。そしてこのプロセスを他の免疫・アレルギー疾患にも適用することにより、ヒトとマウス研究の橋渡し的研究の遂行につながり、広く世間に応用されるplatformとなることを目指す。アトピー性皮膚炎患者と健常者の皮膚病変部より患者の同意のもとに皮膚生検を施行し、DNAマイクロアレイ法により遺伝子発現profileを検討した。また、インドメタシンが著効する好酸球性膿萢性毛包炎の患者におけるプロスタグランジン合成酵素の発現を免疫染色法により検証した。するとシクロオキシゲナーゼ(COX)2やPGE2合成酵素の発現がアトピー性皮膚炎患者で増加し、また好酸球性膿疱性毛包炎の患者においてPGD合成酵素の発現が亢進していた。現在アトピー性皮膚炎におけるPGE2をはじめとするプロスタグランジンの役割を皮膚症状の進展、IgE誘導の観点から解析を行っている。COX阻害によりマウスアトピー性皮膚炎の症状が増悪することより、プロスタグランジンはアトピー性皮膚炎の進展に防御的に作用している可能性がある。また、PGD2は脂腺に作用して好酸球の遊走を誘導するエオタキシンの合成を誘導し、病態形成に関与していることが示唆された。以上より、プロスタノイドは皮膚免疫・アレルギーの病態形成に関与しており、今後も引き続きその役割をマウスとヒトとの両方の観点から進め、臨床応用への基盤作りに貢献する。
2: おおむね順調に進展している
当初より計画していたヒト炎症性皮膚疾患の発症における脂質メディエーターの一つであるプロスタノイドの関与を明確に示す事ができ、今後の研究計画の方向性が示されたことより、順調に研究の進捗が進んでいると考える。
今後も引き続きアトピー性皮膚炎をはじめとするアレルギー・炎症性皮膚疾患の発症機序について、マウスとヒトの両方向からアプローチすることにより、脂質メディエーターの役割を明確にする。そして、その基礎研究結果をもとに、治療への応用基盤を確立することを本研究の今後の推進方策である。
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