研究領域 | 生命応答を制御する脂質マシナリー |
研究課題/領域番号 |
23116101
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宮地 良樹 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30127146)
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研究分担者 |
鬼頭 昭彦 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40508438)
本田 哲也 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40452338)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | アレルギー / 免疫 / アトピー性皮膚炎 / マウスモデル / 脂質メデイエーター |
研究実績の概要 |
脂質メディエーターは、生体のホメオスタシスの維持や、免疫・アレルギー発症のバランスを司っていることが推測される。ところが、多数の脂質メディエーターにおいて、どの脂質メディエーターが本質的に免疫・アレルギー疾患に関与しているのか、また、ヒトでの役割の詳細について不明である。本研究では、アトピー性皮膚炎などの炎症性皮膚疾患をモデルとして、マウス・ヒトの見地から、脂質メディエーターの免疫・アレルギーにおける役割の解明と治療応用の基盤を形成するプロセスを確立することを目指す。 アトピー性皮膚炎と健常者の皮膚病変部より患者の同意のもとに皮膚生検を施行し、 DNAマイクロアレイ法とメタボローム解析により遺伝子発現profileを検討した。現在アトピー性皮膚炎におけるPGE2をはじめとするプロスタグランジンの役割を皮膚症状の進展、IgE誘導の観点から解析を行っている。COX阻害によりマウスアトピー性皮膚炎の症状の増悪や血清IgE値の上昇を認めた。従って、プロスタグランジンはアトピー性皮膚炎の進展に防御的に作用している可能性があり、現在責任受容体の同定を行っている。また、インドメタシンが著効する好酸球性膿疱性毛包炎の患者におけるプロスタグランジン合成酵素の発現を免疫染色法により検証した。好酸球性膿疱性毛包炎の患者においてPGD合成酵素の発現が亢進していた。PGD2は脂腺に作用して好酸球の遊走を誘導するエオタキシンの合成を誘導した。また、ウイルスの自然免疫認識に働くTLRによりPGD2によるエオタキシンの産生亢進を認めた。以上の成果はPGD2が好酸球性膿疱性毛包炎の病態形成に関与していることを示唆する.本成 Journal of Allergy and Clinical Immunologyに掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初より計画していたヒト炎症性皮膚疾患の発症における脂質メディエーターの一つであるプロスタノイドの関与を明確に示す事ができた。好酸球性膿疱性毛包炎はこれまで難治であり割原因不明の皮膚免疫・アレルギー疾患の一つとされていたが、本成果により、治療への糸口がつかめた。この解析手順をプラットフォームに、今後他のヒト免疫・アレルギー疾患における脂質メディエーターの役割の解明がなされることが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続きアトピー性皮膚炎や尋常性乾癬をはじめとするアレルギー・炎症性皮膚疾患の発症機序について、マウスとヒトの両方向から網羅的にアプローチして脂質メディエーターの役割を明確にする。マウスから得られた基礎研究結果をもとに、ヒトアレルギー・炎症性皮膚疾患の治療への応用基盤を確立することを本研究の今後の推進方策である。
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