研究領域 | 生命応答を制御する脂質マシナリー |
研究課題/領域番号 |
23116102
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
馬嶋 正隆 北里大学, 医学部, 教授 (70181641)
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研究分担者 |
藤田 朋恵 北里大学, 医学部, 講師 (20296510)
細野 加奈子 北里大学, 医学部, 助教 (80532556)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | リンパ管新生 / VEGF-C / Prostaglandin / 受容体 / Cyclooxygenase / 炎症 / 腫瘍 |
研究実績の概要 |
病態時のリンパ管新生を増強する生体内活性物質プロスタノイドの役割について検討を加えることができた。主な成果内容以下の通りである。 1) 慢性増殖性炎症時のリンパ管新生とPG受容体シグナリング 増殖性の炎症をミミックするマトリゲル皮下接種モデルを作成し、増殖性炎症時の肉芽組織内におけるリンパ管新生について検討した。FGF-2含むマトリゲルをマウスの皮下に接種すると、ゲル周囲では肉芽組織形成が認められ、マトリゲル周囲に集積した細胞は、COX-2やその下流でPGE2を合成する最終段階を担う酵素である膜結合型プロスタグランジンE合成酵素(mPGES-1)を発現していた。リンパ管内皮マーカーであるVEGFR-3遺伝子発現量をゲルで調べると、FGF-2刺激で発現量が増大し、COX-2阻害薬であるcelecoxibの連日投与により、VEGFR-3発現量は用量依存的に抑制された。celecoxibの投与によりリンパ管新生が有意に抑制されることが確認された。EP1~EP4を欠損させた4種のEPノックアウトマウス(EP1-/-、EP2-/-、EP3-/-、EP4-/-)を用い検討を行ったところ、EP3-/-、EP4-/-でVEGFR-3発現量の有意な抑制が認められた。肉芽組織の免疫染色像でfibroblastとマクロファージでVEGF-CやVEGF-Dの発現が確認された。以上より、この増殖性炎症巣におけるリンパ管新生では、fibroblast 、マクロファージでのPGE2のEP3/EP4受容体を介したシグナルが重要であることが判明した。細胞腫により、PG受容体を詳細に使い分けていることも判明した。 2) がん依存性のリンパ管新生とPG マウス腫瘍接種モデルにおいても、COX-2によって生成されたPGE2がEP3、EP4受容体を刺激し、Stromaでの腫瘍リンパ管新生を増強していることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は十分順調に遂行できていると考えている。今後、COX-2の関与が明らかな病態では、役割を持つPG分子種の特定と受容体の解析を進める。また臓器特異的な遺伝子の不活化により、役割を持つ細胞腫の特定を進める予定にしている。特に、2次性浮腫モデルでは、予想外のメディエーターの関与を示す成績が得られている。時間経過をふまえた評価に専念していきたい。また、リンパ節転移についても、premetastatic nicheの成立を示唆する知見が得られており、成立機序の解析を行なう予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1)2次性リンパ浮腫モデルおよびで腫瘍転移モデルでのリンパ管新生の経時的変化の解析:マウス尻尾基部皮下組織全周掻爬モデルで、関与するPG受容体の特定を行なう。あわせて、①腫瘍皮下接種②肺癌細胞縦隔リンパ節転移③悪性黒色腫膝下・鼠径リンパ節転移④大腸癌腸間膜リンパ節転移各モデルを作成し、腫瘍原発巣、転移巣、sentinel lymphnodeを対象に、腫瘍及び間質ストローマにおけるリンパ管の新生を経時的空間的に評価する。転移リンパ節内、リンパ管新生部位における脂質生成系の動態、脂質の定量解析をおこなう。特に、リンパ節転移の成立機構(遊走、接着機構)および転移成立に関与する樹状細胞、Treg等のリンパ球の動員、機能を解析評価する。 2)小分子化合物による脂質機能シグナルの治療応用への検討:受容体アゴニスト、アンタゴニスト、酵素阻害薬の有効性を各モデルで検討する。トランスレーショナルリサーチ移行への妥当性を検討する。 3)標的分子過剰発現細胞作成、細胞治療の検討:可溶性PG受容体過剰発現fibroblastを腫瘍病巣に局所適用する、骨髄移植する、あるいは異所性(腹腔内、皮下組織)に局所適用(接種)することで、リンパ管新生、リンパ行性転移が抑制されるか否か検討し、有効性を評価する。逆に脂質合成の律速酵素過剰発現細胞で、治療的なリンパ管新生増強を試みる。
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