研究領域 | マトリョーシカ型進化原理 |
研究課題/領域番号 |
23117002
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
永井 宏樹 大阪大学, 微生物病研究所, 准教授 (80222173)
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研究分担者 |
山口 博之 北海道大学, 大学院保健科学研究院, 教授 (40221650)
丸山 史人 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30423122)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 細菌 / 細胞内寄生 / 細胞内共生 / レジオネラ / アメーバ / A群レンサ球菌 |
研究実績の概要 |
1. アメーバ中での増殖に特異的に必要なレジオネラエフェクタータンパク質の解析 昨年度までに、自由生活性アカントアメーバおよび細胞性粘菌中での増殖に必要で、哺乳動物のマクロファージ中での増殖には必要ないアメーバ特異的エフェクタータンパク質を2種同定した。本年度はその作用機序を明らかにするべく、これらエフェクタータンパク質に相互作用する宿主側因子あるいはシグナル経路の探索を試みたが、同定には至っていない。 2. アメーバ側の寄生・共生体に対する生存戦略の解析 これまでにNeochlamydiaが共生する二株のアメーバ(Acanthamoeba)を土壌より株化している。興味深いことにNeochlamydia S13共生アメーバは天敵レジオネラの感染に対して抵抗性を示すが(除菌するとその抵抗性は喪失する)、Neochlamydia S40共生アメーバは容易にレジオネラに感染し破壊されてしまう。本年度は領域支援班(B02班 黒田誠・国立感染症研究所センター長)と連携して、これらアメーバ共生菌の比較ゲノム解析を行うと同時に、アメーバ側のトランスクリプトーム・プロテオーム解析により発現変動遺伝子解析を行った。 3. 細胞内寄生・共生菌のゲノム進化の解析 259株のA群レンサ球菌の比較ゲノム解析の結果、劇症型、非劇症型それぞれに特異的かつ新規の一塩基多型を同定することができた。さらに、病原因子の運び屋であるバクテリオファージ上に多数のメチル化酵素(病原性を含むゲノムレベルでの遺伝子発現に影響を与える)を見出すことが出来た。これらの過程で劇症型にはバクテリオファージが多く存在すること、これを規定するのが細菌の獲得免疫であるCRISPRがになっていること、そして、非劇症型株と異なりゲノム縮小が生じていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、アメーバ特異的エフェクターの解析に遅れがみられるものの、アメーバのトランスクリプトーム・プロテオーム解析系による発現変動遺伝子の同定や、大規模なゲノム解析の結果、A群レンサ球菌は細胞内寄生細菌の特徴を有していること、オルガネラ化の初期段階ともいえる細胞内で宿主による分解を防ぐ機構を有していることが見出されたなど、当初予定の研究計画をおおむね達成できたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
レジオネラ側からの解析においてエフェクタータンパク質の機能解析に手間取っている点は否めないが、これが困難であることは当初より折込ずみである。バイオインフォマティクス等新視点からの領域内連携による解析を視野に入れて、より精力的に研究を展開していきたい。
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