研究領域 | マトリョーシカ型進化原理 |
研究課題/領域番号 |
23117003
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
守屋 繁春 独立行政法人理化学研究所, 長田抗生物質研究室, 専任研究員 (00321828)
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研究分担者 |
大熊 盛也 独立行政法人理化学研究所, バイオリソースセンター, 室長 (10270597)
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研究期間 (年度) |
2011-07-25 – 2016-03-31
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キーワード | 共生 / シングルセル解析 / 全ゲノム増幅 |
研究概要 |
シロアリ腸内の原生生物の細胞に共生する細菌を含む腸内の細菌群をセルソーター装置を用いて1細胞ずつ分離・分取し、ゲノム解析に供することを目的とした。培養可能な細菌、および、土壌由来のモデル微生物群集等を用いて、1細胞の分離・分取条件を設定することができた。しかし、シロアリ腸内の細菌群では、分取した数多くの1細胞から全ゲノム増幅を行ったが、十分なゲノム増幅が得られるものは2割にみたなかった。セルソーターでの分離・分取のために細菌を染色しているが、腸内には木質由来の顆粒などが自家蛍光を有しており、これらの夾雑物が細胞の代わりに分取されていると考えられた。さらに、分子系統マーカー遺伝子を解析した結果、腸内共生細菌の一部分の細菌種のみしか分取できていないことが判明した。木質由来の夾雑物の混入を減らし、より多様な腸内細菌を分取するために、染色や分取範囲などの条件を検討したが、実験に供する前にシロアリをセルロースで飼育することにより自家蛍光夾雑物を減らすことで、全ゲノム増幅の効率が向上し、また、より広範囲の分取を行うことで腸内の細菌群集を反映した分取が可能となった。分離・分取した1細胞からの全ゲノム増幅の純度は、PCR増幅した16S rRNA遺伝子を直接シーケンスし、混入のない配列であることを確認して検定した。純度が確認されたもので、腸内の原生生物の細胞表層に付着する共生細菌由来の増幅全ゲノムをゲノム解析に供した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シングルセルの分離条件と全ゲノム増幅効率の問題をほぼ解決し、ゲノム解析に供することができるようになり、多くの共生細菌についてシングルセルからのゲノム情報を取得することが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
複数の共生細菌について、シングルセルから増幅した全ゲノムのゲノム解析を実施する。ゲノムの完全解読は期待できないので、すべての細菌が有していると考えられる遺伝子セットの何割が解読ゲノムに認められるかといった指標を用いて評価する。16S rRNA 遺伝子配列で純度を検定しているが、非特異的増幅や混入がすべて否定できている訳ではないので、解読ゲノムに本来の共生細菌由来でない配列が混入している可能性をどのように検討するかが課題である。対象とする共生細菌に近縁の細菌種でゲノム解読がなされていれば、そのゲノムとの相同性をひとつの指標として対応するが、GC含量や数塩基の並びの頻度等を指標として混入配列を検出して排除する。
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