研究領域 | マトリョーシカ型進化原理 |
研究課題/領域番号 |
23117006
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
稲垣 祐司 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (50387958)
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研究分担者 |
小保方 潤一 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (50185667)
神川 龍馬 京都大学, 地球環境学堂, 助教 (40627634)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | オルガネラ進化 / ゲノム進化 / 共生 / 光合成 / 窒素固定 |
研究実績の概要 |
H26年度には、Rhopalodia科珪藻R. gibberulaの楕円体ゲノムの完全解読を行った。また、R. gibberulaのRNA-seqデータ中に楕円体ゲノムから水平転移したと思しき遺伝子配列を探索したが、核ゲノムからの転写物データ中には楕円体遺伝子を検出できなかった。さらにR. gibberulaの培養細胞の増殖速度が低下し、最終的に死滅した。そこでRhopalodia科珪藻E. adnataの新しい培養株を確立した。 有殻アメーバPaulinella chromatophora MYN-1株のゲノム解読を継続した。信頼性の高い核ゲノムデータ解読を目指し、これまでに確立した高純度のMYN-1株DNAサンプルを用いて追加の次世代シーケンス解析を行っている。これまでの解析によりゲノムは約 1 Gbp程度だが各種のリピート配列が大量に存在することが判っており、ゲノム解析を困難にしている。H24年末時点では、スキャッフォールド数は約3万、その合計長は約700 Mbpである。またゲノム解読と並行し、有色体から水平伝播した遺伝子の探索、ゲノム中でのmRNA転写開始点の網羅的同定を行っている。 Rhopalodia科珪藻の楕円体に直近な自由生活性シアノバクテリアを高精度で推測するため、ゲノムデータに基づく系統解析を目指している。楕円体の起源に近縁となる可能性のあるシアノバクテリアCyanothece sp. NKBG520001株からは、昨年度までに次世代シーケンスデータを取得しており、本年度解析を行った。このシアノバクテリアゲノムにはIS配列が多数存在したため完全に解読することはできていないが、約5.7 Mbpであると推測できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Rhopalodia科珪藻培養株(R. gibberula)が死滅し、新たな培養株(E. adnata)を確立したため研究に遅れが生じている。またPaulinella chromatophoraのゲノム解読は、リピート配列が原因となり再構築が困難であるため、追加の次世代シーケンス解析が必要であった。
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今後の研究の推進方策 |
新たに確立したRhopalodia科珪藻Epithemia adnataについて、楕円体ゲノムの解読、核ゲノムから転写されるmRNAの網羅的解析(RNA-seq解析)、核ゲノム解析を行い、宿主(珪藻)ゲノム中に転移した楕円体遺伝子を探索する。また楕円体内に局在するタンパク質を同定するため、楕円体の精製とプロテオーム解析を目指す。 Paulinella chromatophoraの高精度のゲノムデータを取得するため追加の次世代シーケンス解析を行った。これら新たに取得した解析データを加えることで、より信頼性の高いゲノムデータの確立を目指す。また現存のゲノムデータとmRNAデータ、転写開始点データを組み合わせることで、シアノバクテリア共生体(有色体)から核ゲノムに転移した遺伝子が、宿主ゲノム内でどのような経緯で転写活性を獲得したのかを推測する。 シアノバクテリアCyanothece sp. NKBG520001株から取得したイルミナHiseq2000のゲノムデータに、PacBioシーケンサーからのゲノムデータを追加して解析することでNKBG200001株ゲノム配列の完全解読を目指す。さらに決定したゲノム配列と公共データベース中のシアノバクテリアゲノムデータを合わせ、ゲノムデータに基づく大規模分子系統解析を行うことで楕円体の起源の起源となった系統を高精度で推測する。
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