研究領域 | 精神機能の自己制御理解にもとづく思春期の人間形成支援学 |
研究課題/領域番号 |
23118002
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研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
長谷川 眞理子 総合研究大学院大学, その他の研究科, 教授 (00164830)
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研究分担者 |
西田 淳志 公益財団法人東京都医学総合研究所, その他部局等, 研究員 (20510598)
佐々木 司 東京大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (50235256)
高橋 泰城 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (60374170)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 自己制御 / 進化 / 発達 / コーホート / 行動遺伝学 / 内分泌系 |
研究実績の概要 |
【分担班】 長谷川は,西田と連携しながら,東京ティーンコホートの設立と,研究体制の確立を行った。また,最近の日本における少年犯罪のデータおよび児童虐待事件のデータをさらに収集し,データ入力と分析を行っている。西田は,進行中のコホート第1次調査の実施,および,26年度夏に開始される第2次調査に向けた準備作業を順調に進めた。また,25年12月末までに得られた2845世帯分のデータを用い,予備的な解析を進めている。なお,A03班との共同研究として,コホートサブサンプルを対象とした画像およびホルモン調査も順調に進んでいる。佐々木は,東大教育学部附属中学で実施中の縦断調査データを中心に,自己制御力形成と関連の深い生活習慣および精神的健康状態についての検討を行った。高橋は,自己制御に関する神経経済学的パラメータとして,時間割引・確率割引・社会割引に関する実験的・理論的研究を行った。また,犯罪に対する懲罰行動に関して,行動経済学的な手法を用いて神経法学的な実験研究を行った。 【公募班】 西谷は,第2次性徴の発達段階ごとにそれぞれ60~99名,若年成人コントロール104名を対象に,頬粘膜及び唾液試料の採取,行動課題による社会性・自己制御能力の測定を行った。藤澤は,質問紙本調査(約900家庭),内分泌実験本調査(26組52名)を実施した。また,両調査で得られたデータを用い,解析をおこなった。文東は,DNAメチル化解析における唾液の有用性を検討するため、これまで多く使用されてきた血液サンプルとのメチル化の比較を行った。また,精神疾患との関与が多く報告されているSLC6A4遺伝子領域の2か所のCpG部位について,双極性障害患者・健常者、約450名ずつのDNAメチル化データを取得し,この領域のマーカーとしての有用性を検討した。次世代シーケンサーを使用したメチル化解析の有用性についても検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分担班,公募班,ともに順調に研究が進められている。 西田・長谷川の担当するコホート調査には若干の遅れが見られるが,これは,様々な社会的状況による制約があったためでもあり,また,コホートの最初の設立設計が非常に重要であると考え,十分に時間をかけて慎重に進めてきた結果でもある。現時点で約40%という非常に高い協力率が得られていることから,多少の時間的遅れを補っても余りあるものと考えられる。 その他の分担班,公募班も,新学術内での共同研究や共同のシンポジウム等を通じて,相互に連携をとりながら着実に研究を進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
【分担班】 長谷川は,少年犯罪と児童虐待のデータ分析を今後も進めていく。西田は,長谷川と連携しながら,残りの第1次調査を実施していくと同時に,第2次調査の準備を進めていく。また,A03班との共同研究であるサブサンプル調査も引き続き連携を強化しながら進めていく。高橋は,今後とも引き続き、神経経済学の概念を用いて,自己制御がたとえば社会的場面でどのように働くかを調査し,生物学的基盤も研究する。佐々木は,この数年で蓄積されてきた縦断データを本格的に活用し,睡眠の問題や学校システムの現状を含め,思春期の若者の行動自己制御に関連する諸問題の解析と文献化を進めていく。 【公募班】 西谷は,2年間をかけて収集してきた思春期~若年成人の各発達群の横断データ収集を行ってきた。今後は,この集団の2年後のデータ収集を縦断的に行う(前向きコホート)ことで,更に研究を発展させる。藤澤は,予備的解析の結果をもとに,どのような環境要因が非共有環境として作用しているといえるのか,縦断的・横断的分析をおこなっていく予定である。文東は,コホート研究におけるマーカー候補領域(メチル化の個人間差異の大きい部位)の同定を,健常者20人分のデータを使用して継続して解析を行う。
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