計画研究
長谷川・西田は、昨年度に続き、思春期の心身の発達過程を縦断的にとらえることを目的に、東京ティーンコホートの構築と、その研究体制の確立を行った。平成24年9月に開始したコホート第1次調査は、平成26年12月に完了。最終的に4,478世帯のコホート登録が完了し、我が国最大規模の思春期コホートが無事に構築された。登録児童集団(10歳児コホート)のうち、第二次性徴発来済みの児童が男児では7.3%、女児では10.3%であり、第二次性徴発来前の状態を評価することを意図した第1期調査の目標は達成された。第1期調査データを用いた解析により、10歳児童の自己制御に影響を与える要因の解明が進められている。また、平成26年9月からは第2期調査(12歳時追跡調査)が開始され、現在、データ収集が概ね順調に進んでいる。第2期調査では、第1期調査での質問項目に加え、ホルモンや遺伝子等に関する情報を得るためにバイオ検体の回収も実施している。佐々木は、昨年と同様、東大附属の生徒(12-18歳)を対象に、精神的健康、生活習慣、いじめ・暴力等の問題、援助希求行動等に関する調査を実施した。長谷川・西田の東京ティーンコホートと共通した質問を用いたため、ティーンコホートの10・12歳児点の結果が年齢上昇とともにどう変化していくか、また遺伝的背景を統制した結果はどうか(本対象の15%は双生児でその7割は一卵性)の検討が可能となった。高橋は、自己制御と精神機能の問題との関連を探るため、神経経済学のモデルを応用する研究を進展させた。まず、うつ状態の人達においては、ポジティブな自伝的記憶によって脳の報酬回路が活性化しにくいという最近の研究結果に対して、神経経済学の枠組みを用いて仮説構築を行った。続いて、神経経済学的分析により、サイコパス傾向が高い人ほど、報酬や罰の確率割引におけるリスク・テイキング傾向が高いことを示した。
2: おおむね順調に進展している
東京ティーンコホートの構築に要する努力量が当初考えていたよりもずっと大きかったため、長谷川研究室で予定していた課題の達成がやや遅れている。しかし、最初のコホート設計が非常に重要であることは明らかであるので、ここで手を抜くことはできない。その成果あって、約4500世帯という規模の大きい一般思春期サンプルのコホートを設立することができた。これは多少の時間的遅れを補ってあまりあることであろう。また、東京ティーンコホート第1期調査の実施において、最終盤(平成26年6月ごろ)に、ベネッセコーポレーションの個人情報漏えい事件が発生し、その影響で、本調査への協力率が低下した時期が3か月ほど続き、当初の予定よりも4か月程度、第1期調査の完了が遅れた。しかしその後無事に第1期調査は終了し、第2期調査も開始されており、問題は小さいと考えられる。佐々木・高橋は、調査を予定以上に順調に進めており、成果もあげている。
長谷川・西田・佐々木は、A01計画班の中での連携研究を推進するために、東京ティーンコホート第1期調査、および東大附属中等教育学校の中高生コホートの双方で共通して収集している自己制御関連指標の解析を進め、第二次性徴発来前後の関連指標の推移やそれに影響を与える要因の検討を行う。また、西田は、東京ティーンコホートで得られた知見とA03計画班の東京ティーンコホートサブサンプル研究(脳画像研究)で得られた知見とを統合化した研究成果とりまとめ作業を研究最終年に向けて進める。長谷川は、少年犯罪と児童虐待のデータ分析を並行して今後も進めていく。アイ・トラッカーを用いた実験研究は、すでに成人を対象として予備調査を開始しており、とくに計画の変更の必要はない。佐々木は、平成26年度と同様の調査を継続する。6年分のデータが揃った対象が倍増することで、より利用価値の高いデータとなることが期待される。解析についても既に諸論文での共著者として共同研究を進めている研究統計学の専門家とともに検討を進める。なお、学校での経年調査を行うには、個々の生徒の問題に関する相談等、学校が求める需要に応ずる等の対応を充実させ、信頼関係を築くことが極めて重要であり、これまでそのようにして6年にわたる縦断調査を実現してきた。現在、これをさらに多くの学校で可能とするための学校支援ツールやシステムの開発も合わせて行っている。今年度は将来に向けて、その成果を活用した、調査対象校の拡大の試みも予備的に試みる。高橋は、神経経済学の理論をうつ病などの精神疾患における自己制御問題に応用するだけではなく、動物行動の強化学習理論などとも組み合わせて、さらに計算論的精神医学の発展に資するとともに、精神機能における自己の役割の意思決定理論や進化生物学理論における解明を目指す。
2014年7月12日 奈良県産婦人科医会総会・学術講演会「ヒト繁殖生理の進化における雄と雌の葛藤」
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