計画研究
橋本は自閉症スペクトラム障害(以下ASDと略記)を対象として、自己・他者参照処理について、自己と他者の視点の切り替えに伴う脳活動の変化が、ASDと健常者では異なる脳領域を発見した。酒井はヴァーチャル・リアリティ装置(SRシステム)を使用し、因果関係の推論と認知が非日常的な経験によってどのように影響を被るのかを探る研究を理研の藤井チームと実施した。藤井はネットワーク間構造から社会的認知メカニズムを明らかにすること、さらにネットワーク構造間に相互依存性があることを示した。萩原は具体的には、「自分の声」の識別に関して、第3フォルマント以上の高い周波数帯域において、自分の声が他人の声よりも識別しやすいことを明らかにした。岡ノ谷はノイズ音を回避するよう歌を修正する学習行動(ノイズ回避学習)を利用した実験により、間隙の時間長の可塑性が成鳥で示された。また、行動修正能は発達段階で異なることを示した。福田は統合失調症において、左側頭部の脳賦活は陽性陰性症状評価尺度the Positive and Negative Syndrome Scale (PANSS)で評価した不統合症状と負の相関を、右下前頭部の脳賦活はPANSSの陰性症状や不統合症状および罹病期間と負の相関があることを示した。
2: おおむね順調に進展している
順調に研究計画は進展しており、大きな問題はないと考えられる。
橋本は現在取り組んでいる自己の声のオンライン制御に関する萩原との共同研究を推進し、論文化を目指す。データ収集はほぼ完了しており、データ解析の結果を検討しながら、追加実験が必要か、専門誌に論文の投稿が可能かを検討しながら研究を進める。酒井は、SRシステムを使用した実験の準備を急ぎ、7月~9月を目処に実施する予定である。同時に、事象関連電位を使用した実験の準備がほぼ完了しているため、5月~6月を目処に実験を実施する予定である。藤井はニホンザルを用いた社会性課題を継続し、社会的文脈に応じて行動を切り替える適応行動の動的メカニズムを明らかにする。萩原は、基本周波数とフォルマント周波数の解析結果をあわせて検討することで、発声の自己制御システムのモデル化を目指す。また、すでに収集した質問紙調査のデータを解析することで、発声の制御に関係がある「自己に対する意識の要因」を明らかにする。岡ノ谷はジュウシマツの歌可塑性:歌の可塑性を様々な日齢群で調べることで、自己制御能力の発達的変化を検討する。また薬理操作と神経活動計測を組み合わせた手法で可塑性を調整する神経機構を調べる。福田は、自己制御についての脳機能の検討を、①会話という対人関係における自己制御の脳機能の検討対象をうつ病や双極性障害へと広げること、②会話における脳機能を2人同時に検討してその関連を検討すること、③対人関係の困難が中心的な病態である広汎性発達障害の脳機能を自己制御と関連づけて検討することを目指す。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 10件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (33件) (うち招待講演 7件) 図書 (3件)
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