計画研究
岡ノ谷は、ジュウシマツのノイズ音を回避するよう歌を修正する行動に関して実験を終え、歌学習には行動のばらつきが重要な役割を果たすことを示した。橋本は自閉症スペクトラム障害(以下ASDと略記)を対象として、自己・他者参照処理について、自己と他者の視点の切り替えに伴う脳活動の変化が、ASDと健常者では異なる脳領域を発見した。酒井は、因果関係判断の認知神経メカニズムを探る研究を中心に推進し、判断アルゴリズムの解明に欠かせない時間軸に沿った脳活動情報を得た。萩原はリアルタイムに音声を変調するシステムを開発し、自分の声に意図していない変化が起きた場合に、その変化を埋め合わせるように発声を制御することが明らかになった(補償現象)。また、声の高さと音色はそれぞれ独立したメカニズムによって認知・制御されている可能性を見出した。福田は、うつ病と双極性障害について、J Psychiatr Res 57:74, 2014と同じ検査法を用いた検討を行った。その結果、大うつ病性障害と双極性障害のいずれにおいても、会話による脳機能の全体的な賦活は左半球の背外側前頭前野から前頭極にかけて低下を示し、また発話相による賦活は前頭極で低下を示した。大うつ病性障害群においては、全体的な賦活がGAF得点と正の相関を、双極性障害群においては発話相による賦活が発症年齢と負の相関を示した。藤井は、ニホンザルの複数個体が餌を取り合う、社会的エサ取り課題実行中の大脳皮質全体からの神経活動記録を行い、神経活動が、相手の社会的地位をどれくらい弁別しているかを明らかにする神経活動デコーダーを作成した。その結果、具体的な運動準備開始以前の時間帯から、相手の社会的地位の弁別を行う神経活動が、運動野、頭頂葉を中心として見つけた。
2: おおむね順調に進展している
全て計画通りに順調に進展している。
藤井は社会性エサ取り課題に関係しての解析を継続する。また、精神疾患のバイオマーカーとして応用が考えられるMiss Match Negativityの神経機構に関しての実験を始める。福田は自己制御についての脳機能の検討を、さらに広げていくことを予定している。具体的には、①会話という対人関係における自己制御の脳機能の検討対象を、対人関係の困難が中心的な病態である広汎性発達障害へと広げること、②薬物療法がそうした自己制御の困難をどのようなメカニズムでどの程度改善することができるかを明らかにする。萩原は今後は、すでに収集した質問紙調査のデータを声のデータとあわせて解析することにより、パーソナリティなど自己、あるいは自己のメタ認知に影響を与えると考えられる心理学的要因と発声の制御との関係を検討していく。酒井は研究計画はおおむね順調に進行しているため、計画を変更する必要はない。一方、研究計画の中で重要な位置を占める仮想現実が因果関係に及ぼす影響を探る実験を確実に成功させるため、可能な限り速やかに実験を実施し、年度内に結果を得ることが最優先の課題である。橋本は自閉症スペクトラム障害のfMRI用におこなったメタ認知課題のデータ解析をほぼ完了し、論文化を開始する。岡ノ谷は、ジュウシマツのノイズ回避実験結果を論文にまとめるとともに、それらのデータを一貫して説明できる神経メカニズムモデルを提案する。また、ラットのメタ認知実験では、行動データを数理モデルに基づいて解析することで、メタ認知に関わる要因間の影響関係を推定する。平行して、メタ認知実験パラダイムをヒト研究に適用し、fMRIにより脳活動を計測する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (22件) (うち査読あり 19件、 謝辞記載あり 19件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (48件) (うち招待講演 11件) 図書 (5件)
精神神経学雑誌
巻: 117 ページ: 79-93
Neuroimage: Clinical
巻: 31(5) ページ: 493-499
Neuroscience Research
巻: 90c ページ: 56-64
10.1016/j.neures.2014.10.002
International Journal of Neuropsychopharmacology
巻: in press ページ: in press
10.1093/ijnp/pyu083
Neurosci Res.
巻: 90 ページ: 65-71
10.1016/j.neures.2014.11.007.
Current Opinion in Neurobiology
Neurophotonics
巻: 2 ページ: 015003
Journal of Neuroscience
巻: 34 ページ: in press
10.1523/JNEUROSCI.0217-14.2014
Animal Behavior and Cognition
巻: 1(4) ページ: 452-463
10.12966/abc.11.03.2014
Behavioral Processes
巻: 107 ページ: 22-28
10.1016/j.beproc.2014.07.007.
NeuroImage
巻: 103 ページ: 476-484
10.1016/j.neuroimage.2014.08.034.
PLoS One
巻: 9 ページ: e115162
10.1371/journal.pone.0115162
巻: 9 ページ: e115292
10.1371/journal.pone.0115292
Developmental Science
巻: 4 ページ: 628-635
10.1111/desc.12160
PLoS ONE
巻: 9(4) ページ: e94115
10.1371/journal.pone.0094115.
Japanese Institute of Electronics, Information and Communication Engineers Technical Report
巻: 114 ページ: 21-26
巻: 89 ページ: 61-8
心理学評論
巻: 57 ページ: 279-301
J Neurosci Methods.
巻: 15 ページ: 155-165
10.1016/j.jneumeth.2014.06.022.
J Psychiatr Res
巻: 57 ページ: 74-83
10.1016/j.jpsychires.2014.06.009
巻: 85 ページ: 498-507
10.1016/j.neuroimage.2013.05.126
巻: 85 ページ: 518-526
10.1016/j.neuroimage.2013.04.050