研究概要 |
本研究(A03)では,思春期における精神機能の自己制御の形成過程(A01)と神経基盤(A02)の理解にもとづき,思春期の若者が精神機能の自己制御性を育み,自己を発展させ,成熟した人間形成に至る過程の支援策(分子,神経モジュレーション,心理社会的介入)を開発する. 笠井は,多チャンネルNIRSによるニューロフィードバック法を開発し,随意的に酸素化ヘモグロビン上昇・下降をコントロール出来る可能性を見出した.サルとヒトで実施可能な協調運動課題を作成,その神経基盤や種間差を検討した(A02連携).思春期コホートサブサンプルに対し,神経画像計測の準備を進めた.第二次性徴前後での認知・情動・行動の制御と発達に関わる神経回路について,仮説を精緻化した(A01連携). 田中は,神経性無食欲症患者(26例)と健常者(20例)に,身体指標計測,頭部MRI撮像,神経心理検査,fNIRS,顔画像認知試験を行った.Situation Reality技術を,神経性無食欲症患者への支援導入可能性について検討した(A02連携). 村井は,対人コミュニケーションにおける衝動性・リスク態度・社会選好の自己制御メカニズムを明らかにし,対人コミュニケーションにおける自己制御支援策開発を進めた.(1)健常者,(2)統合失調症患者,(3)脳損傷患者,(4)依存症患者,(5)発達障害者を対象として,心理課題・機能的MRI課題作成とデータ収集,構造MRI画像データベースの構築と心理指標との関連の検討,心理測定ツールの開発を順次進めた. 山脇は,情動・気分の自己制御能力修復支援法開発に向け,新入大学生の大うつ病エピソード発症に関するコホート研究を,24年4月より開始する準備を進めた.また,山梨大学と共同し,気分障害患者への経頭蓋直流刺激法(tDCS)について研究を進めた.ラットによる検討では,母子分離と離乳後の単離飼育による,Social Interaction Testでの接触行動低下を見出した. 山崎は,言語・認知による自己制御支援法(メタ認知訓練法)の効果と脳基盤検討のため,統合失調症患者に実施する施行者のトレーニングとセットアップ,パイロット施行を行い,継続的な施行体制を確立した.
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今後の研究の推進方策 |
24年5月に公募研究採用者との間でディスカッションを行い,領域コンセプトの共有化を進める.また,同時期にコホート研究,神経科学,社会心理学の第一人者である研究者を招聘し,公開シンポジウムでのパネルディスカッションを通じて,領域内・領域間でのコンセプト共有を進める.コンセプトの共有と同時に,A01(思春期コホート),A02(神経科学)との共同研究を,研究者間ミーティングを通じて連携を密にしつつ,進捗マネジメントを行う.
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