計画研究
笠井は、思春期に発症し自己制御障害を呈する統合失調症患者を対象にした包括的な生物学的研究を推進した。また、健常者の社会的関係性などに深い関わりを持つ主観的Quality of Lifeの神経基盤の検討を行った。さらに、思春期の自己制御の発達の脳基盤を解明するため、A01との密接な連携により、10代の児童に対するホルモン・エピゲノム・神経画像の計測を開始し、これまでに40組の親子にMRI撮像を行った。村井は、衝動性・依存・社会行動障害という自己制御の障害の諸側面に注目し、支援策開発を進めた。特に統合失調症患者において自己制御に関わる脳構造の変化と、心理指標との関連を見出した。岡本は、精神の自己制御性の獲得によるうつ病発症予防介入に向け、新入大学生を対象として行ったコホート研究に引き続き、認知行動療法を用いた無作為割付比較試験として、リスク群に対して介入を開始した。また、認知行動療法に参加した17名に対してfMRIを用いて自己制御評価の脳賦活課題を行い、介入前後で課題遂行中の脳活動が変化する傾向を見出した。田中は、神経性無食欲症患者の脳機能および構造画像を検討することで、社会的孤立の認知傾向の健常者との違いなどに関する示唆を得た。山崎は、言語・認知による自己制御支援法の効果検討のため、精神病症状を持つ患者にメタ認知訓練法の施行を継続し、プログラム前後で生活機能全般の改善を認めた。A02-A03連携によるサルEcoGとヒトfMRIでの共通の計測系を用いた社会的文脈理解の脳基盤研究では予備的な検討を行った。また、岡本らによるうつ病発症に関するコホート研究と、A02の自己制御の神経基盤に関する画像研究の連携を開始した。
2: おおむね順調に進展している
笠井らは、キャビラリー電気泳動質量分析法にて、初発統合失調症患者の末梢血血漿の3物質の濃度を用いて統合失調症患者と健常対照群を高精度に判別できることを見出した(Koike et al., 2014)。健常者では、近赤外線スペクトロスコピーで測定した認知課題中の前頭前野の賦活と主観的Quality of Life (QOL)尺度との相関を見出し、社会的関係性などに深く関わる主観的QOLの神経基盤の示唆を得た(Satomura et al, 2014)。村井らは、統合失調症の共感性と心の理論の障害について、大脳の自己制御に関わる構造の変化との関連を示した(Fujino et al, 2014; Koelkebeck et al, 2013)。岡本らは、新入大学生をうつ病発症リスクにより3段階に層別化して追跡したコホート研究(1年間、追跡率93%)を進めた。リスク最大群では、希死念慮と神経症傾向が有意に高いこと、サポートへの満足度とQOL得点が有意に低いこと、およびうつ病発症者が3名認められた。無作為割付比較試験として、リスク群に対して認知行動療法の介入を開始した。また、介入群17名の金銭遅延報酬課題fMRIにて、介入前後で課題遂行中の腹側線条体の活動が亢進する傾向を見出すとともに、A02の自己制御の神経基盤に関する画像研究との連携を開始した。田中らは、神経性無食欲症患者の脳機能・構造画像を検討することで、社会的孤立の認知傾向の健常者との違いの示唆を得た。山崎らは、精神病症状を持つ患者12名のメタ認知訓練法前後で生活機能全般への改善効果を認めた。A01-A03連携の思春期コホートサブサンプル研究では、これまでに40組の親子にMRI撮像を行った。A02-A03連携のサルEcoGとヒトfMRIでの共通の計測系の社会的文脈理解の脳基盤研究は、健常ボランティア3名の予備的検討を行った。
統合失調症、うつ病、摂食障害などの自己制御障害を示す精神疾患に対し、脳病態を解明し、それにもとづく薬理学的・心理社会的介入法を開発する。笠井は、統合失調症の早期病態を分子生物学的検討により明らかにし、これまでの成果にて見出された統合失調症に特異的な変化を示す末梢血血漿中の物質を用いた介入研究を検討していく。また、村井は、統合失調症患者、病的賭博患者を対象とした研究により、精神疾患の自己制御障害の脳基盤の研究を継続し、科学的な支援策の検討を行う。岡本は、うつ病に対する認知行動療法プログラムを大学生に適用し、A02の自己制御の神経基盤に関する画像研究の連携を新たに加え、自己制御改善の脳基盤の検討を推進する。田中は、身体イメージの自己制御障害である摂食障害についての検討を進める。山崎は、メタ認知訓練法の対象者リクルートと効果評価を進める。A01との連携による、思春期コホートサブサンプルにおけるバイオマーカー研究は、今後さらに、MRIやDNA、ホルモンなどのバイオデータと、思春期コホート調査で得られた質問紙データを総合的に解析することで、思春期における自己制御精神の形成に関する知見を深め、より良い理解を目指す。A02との連携による、サルとヒトでの共通の計測系を用いた社会的文脈理解の脳基盤研究は、健常人におけるfMRI課題の予備的検討と計測を継続する。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (41件) (うち査読あり 34件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (45件) (うち招待講演 17件) 図書 (5件) 備考 (2件)
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