研究領域 | 動的・多要素な生体分子ネットワークを理解するための合成生物学の基盤構築 |
研究課題/領域番号 |
23119002
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
花井 泰三 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60283397)
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研究分担者 |
饗場 浩文 名古屋大学, 創薬科学研究科, 教授 (60211687)
岡本 正宏 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (40211122)
濱田 浩幸 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (80346840)
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研究期間 (年度) |
2011-07-25 – 2016-03-31
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キーワード | 合成生物学 / シミュレーション / トグルスイッチ / 人工遺伝子回路 / 2成分制御系 |
研究概要 |
本計画研究班の研究目的は、生体分子10 要素以下の少数要素で構成され、望みの動的挙動を実現するための人工遺伝子回路を生体内(in vivo)に構築することにある。この目的を達成するため、1)安定動作するトグルスイッチの構築、2)トグルスイッチの応用研究、3)センサータンパク質の改良、4)クオラムセンシングを利用した応用研究を行っている。 1)の研究に関しては、トグルスイッチを構成するリプレッサーとプロモータのバランスが重要であったことから、確率微分方程式に基づいた理論モデルを構築し、最もよいバランスを求めたところ、実験結果とほぼ同じ結果が得られた。2)の研究に関しては、トグルスイッチを微生物による物質生産に応用するため、代謝経路の分岐点となっている部分に、導入した。その結果、細胞増殖には必要だが、物質生産には不要と考えられる遺伝子をトグルスイッチにてON-OFFしたところ、物質生産の量が拡大することが確認できた。初歩的な結果であるが、合成生物学の応用研究例は少ないため、貴重な研究結果となったと考えている。3)シアノバクテリアが有する、光波長(赤色-緑色)に応答して遺伝子発現を司る2成分制御系に着目し、これを大腸菌内に再構築することで、光波長に応答して遺伝子発現を制御できる大腸菌を作成した。これを用いて、赤色、緑色に加え、明(白色)・暗に対する遺伝子発現の解析を行った。 4)に関しては、クオラムセンシングを微生物の物質生産に行うことについて検討を行った。オートインデューサーを添加すると細胞が溶菌する回路を利用し、その細胞内で酵素の生産を行った。培養液中でオートインデューサーを添加する前は、この酵素活性が見られなかったのに対し、添加後は高い酵素活性が見られた。クオラムセンシング系の回路を応用研究に利用した例も少なく、産業応用に期待が持てる結果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トグルスイッチの理論解析と実験結果の一致が見られたこと、トグルスイッチの応用研究で一定の成果が出始めたこと、センサータンパク質については光波長に応答して遺伝子発現を制御できる大腸菌を作成し様々な波長に対する応答性を確認できたこと、クオラムセンシング系の応用研究でもポジティブな結果がでたことから、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
トグルスイッチのさらなる改良には、応答時間を短くするためにRNAを利用したスイッチ系の利用を考える。また、トグルスイッチおよびクオラムセンシングを利用した物質生産系構築に関しては、さらなるデータの蓄積を行う。センサータンパク質に関しては、ヒスチジンキナーゼのドメイン構造の詳細を考慮し、再度デザインを行うことで大腸菌由来のヒスチジンキナーゼに光応答性を持たせる。また、他の計画班および公募班との共同研究も積極的に行う。
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