研究領域 | 動的・多要素な生体分子ネットワークを理解するための合成生物学の基盤構築 |
研究課題/領域番号 |
23119005
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
木賀 大介 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (30376587)
|
研究分担者 |
井上 丹 京都大学, 生命科学研究科, 教授 (40114855)
井川 善也 富山大学, 大学院理工学研究部, 教授 (70281087)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 合成生物学 / 進化分子工学 / タンパク質 / RNA / 数理モデル / リボザイム / 遺伝暗号 |
研究実績の概要 |
(A-1) 山村班との共同研究において構築・解析されてきた人工遺伝子回路研究について、レポーター遺伝子の発現制御領域が人工遺伝子回路の制御タンパク質を結合して吸収してしまう影響を数理モデルによって示した。(B-1)三角形RNPの頂点に結合するL7Ae蛋白質の末端に融合蛋白質が提示される場合、その配向性は、L7Aeの両末端が位置する三角形の頂点方向に限定される。このような複合体では、提示させる蛋白質の配向性が、複合体の機能に影響する事が知られており、三角形型RNPでの場合でも、提示蛋白質の配向性を自在に調整する事で、より高度な機能性複合体のデザインが可能になる。そこで、L7Ae蛋白質の末端残基を、円順列置換によって野生型蛋白質とは異なる残基とし、新たな末端箇所へ目的蛋白質を融合する事で、提示配向性を変化させる事に成功した(ACSnano 投稿中)。また、(B-2)三角形型RNPの各頂点に別個の蛋白質を提示させる事に成功した(FEBS letters,投稿中)。3)信号伝達制御に成功した三角形型RNPのターゲットとなるレセプターを人工のものに入れ替え、またレセプターからの出力をリン酸化シグナルに変更することでシステムの応用範囲を拡大することを試みた。(C)さらに、自己スプライシング(RNA編集)活性をもつグループI RNA酵素(リボザイム)を人工改変し、2分子のRNA酵素を差別化しつつ選択的にペアリングする分子デザインを考案し、一対のRNA酵素が協調的に作動するRNAデバイスの基幹ユニットを構築した。具体的には、(C-i)単独ではRNA酵素の触媒能が抑制された状態にある人工リボザイムがペアリングにより同時に活性化する分子の設計、(C-ii)ペアリングにより活性化された一対のリボザイムにより二種のRNAが並列的(シス)に編集される分子システムの構築、に成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全体として研究は順調に進展しており、成果を計8報の論文にまとめることができた。レポーター遺伝子の発現制御領域が人工遺伝子回路の制御タンパク質を結合して吸収してしまう影響を数理モデルによって示した系について、細胞を顕微鏡により経時観察する準備が順調に進展している。また、細胞表面レセプターからの信号伝達の制御法開発に関するシステムの高度化,それに関連する応用研究は順調に進展している。しかし、初期目的であった細胞内マーカータンパク質に特異的に結合するアプタマーなどによる翻訳制御の試みにおいてアプタマーを開発し、それらに対応するRNA結合蛋白質を用いる計画は試みを続けているもののSN比の向上に成功していない。本年度に設計および構築した「二種のRNAが並列的(シス)に編集される分子システム」は、試験管内反応において、十分な活性を保持して二種のRNA配列を協調的に編集できことが実験的に示された。この結果は次年度の目標である、より複雑なRNA編集反応の分子デザイン、およびこれらの複数種RNAの協同編集反応を大腸菌細胞内で行なう上での重要な基礎技術となる。従って本研究課題は、当初の計画通りおおむね順調に進行している。
|
今後の研究の推進方策 |
レポーター遺伝子の発現制御領域が人工遺伝子回路の制御タンパク質を結合して吸収してしまう影響や、プロモーターによる制御の相互作用によりプログラミングされたネットワークが細胞増殖に与える影響を、培養実験によって詳細に評価する。人工経路の構築に有益な生体高分子について、進化工学による創生をさらに続ける。そのために、これまでに活用してきた、アミノ酸の種類を変化させた人工遺伝暗号表の適用を続ける。本研究課題ではRNA酵素を駆使した協調的RNA編集反応を、生体内で利用される異なる種類のRNA編集反応に適用し、遺伝子回路ツールとしての利用に十分な活性を付与することを目的とする。今後は二種のRNAが並列的(シス)に編集される分子システムを大腸菌細胞内で作動させるとともに、より高度なRNA編集反応である二種のRNAが協調して交差的(トランス)に編集される分子システムの構築とその細胞内での機能発現を行なう。
|