研究領域 | 予測と意思決定の脳内計算機構の解明による人間理解と応用 |
研究課題/領域番号 |
23120003
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
今井 むつみ 慶應義塾大学, 環境情報学部, 教授 (60255601)
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研究分担者 |
松井 智子 東京学芸大学, 国際教育センター, 教授 (20296792)
岡田 浩之 玉川大学, 工学部, 教授 (10349326)
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キーワード | 実験系心理学 / モデル化 |
研究概要 |
ヒトの知性は、動物と多くを共有しつつも言語の存在により決定的に異なる。ヒトのほとんどの知的認知活動は言語を介して行われる。子どもの効率的な学替を可能にする最初の足がかりとなる能力やその後の学習過程など、その全容と詳細は未だ明らかではない。そこで言語獲得のブートストラッピングプロセスのメカニズムのモデルとその神経基盤を明らかにすることを目的とし、子どもの言語学習の過程をモデルフリーに近い状態からどのように学習が始まり、発展し、モデルベース主体の認知に移行していくのかという問題として捉え、以下の3つの認知能力をモデルフリーの状態から言語学習を始めるための能力と仮定する。 1)音象徴性への敏感性:語意学習以前と学習開始当初の乳児が物体の形や人の運動などの視覚刺激とラベルの音の間の音象徴性を感じる能力を持つかを調べるため、視覚刺激と新奇の言語音を対提示したときの脳波測定を行い、音と対象の間に音象徴性を感じる能力があるか否かを検討した。事象関連電位では視覚-ラベル音の不一致の際N400のような意味成分が検出されることを確認した。脳波の大域的位相同期分析を行い、多感覚の神経活動の同期ダイナミクスによるbinding現象を検討中である。2)言語学習以前のヒト乳児とチンパンジーにおける対称性推論能力:非言語の領域で言語(語意)学習が始まる以前、言語学習初期、語彙数が急速に増加する語彙爆発期にある乳児にモノ→動きの連合を学習させ、学習と同じ方向性で乳児がこの刺激・手続きで対応関係の学習ができることを確認した。3)他者の意図の推論の前駆としての選択学習:他者から情報を受け取るとき、与えられた情報の内容だけでない。この能力が言語学習以前に備わっているものなのかを確かめるため、さらに、18,24カ月の乳児が確信度イントネーションによる選択的学習をするかを非接触視線計測装置と脳波を用いて検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
音象徴に関する幼児の脳波データを既に収集済みであり、そこで収集された脳波データを事象関連電位として分析中であり、同時に大域的位相同期分析を行い、多感覚の神経活動の同期ダイナミクスによるbinding現象も当初の想定どおりに進めている。
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今後の研究の推進方策 |
他者の意図の推論の前駆としての選択学習において、計画していた他者の発話の正確度を判断する能力は、言語学習以前に備わっているものかどうかを確かめるため、先行研究で示された年齢よりも若年の18,24カ月の乳児が確信度イントネーションによる選択的学習をするかについて、まずは行動実験を行う。現在実験用映像データの作成および提示音声の調整は終了しており、行動実験を行った後、非接触視線計測装置と脳波を用いて検討する。
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