• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実績報告書

ヒト乳児の言語学習を可能にするモデルフリー・モデルベースの学習機構

計画研究

研究領域予測と意思決定の脳内計算機構の解明による人間理解と応用
研究課題/領域番号 23120003
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

今井 むつみ  慶應義塾大学, 環境情報学部, 教授 (60255601)

研究分担者 岡田 浩之  玉川大学, 工学部, 教授 (10349326)
松井 智子  東京学芸大学, 学内共同利用施設等, 教授 (20296792)
研究期間 (年度) 2011-04-01 – 2016-03-31
キーワード実験系心理学 / モデル化
研究実績の概要

ヒトの知性は、動物と多くを共有しつつも言語の存在により決定的に異なる。ヒトのほとんどの知的認知活動は言語を介して行われる。子どもの効率的な学習を可能にする最初の足がかりとなる能力やその後の学習過程など、その全容と詳細は未だ明らかではない。本研究は言語獲得のブートストラッピングプロセスのメカニズムのモデルとその神経基盤を明らかにすることを目的とし、以下の3つの認知能力を端緒とした言語学習のブートストラッピングモデルを検討する。
1)音象徴性への敏感性:語意学習以前と学習開始当初の乳児の視覚刺激とラベルの音の間の音象徴性を感じる能力について検討する。そのベースラインとして今年度はまず成人を被験者として視覚刺激と新奇の言語音を対提示したときの脳波測定を行った。音と対象の間の音象徴性について乳児との比較検討を行い、事象関連電位では視覚―ラベル音の不一致の際にN400に類似した反応が検出されたが、計測データが膨大であり、さらに詳細な分析を行う必要がある。
2)言語学習以前のヒト乳児とチンパンジーにおける対称性推論能力:非言語の領域で言語(語意)学習が始まる以前、言語学習初期、語彙数が急速に増加する語彙爆発期にある乳児にモノ→動きの連合を学習させ、学習と逆方向でヒトの乳児が対応関係の弁別ができたのに対して、チンパンジーではそれができないことを確認した。
3)他者の意図の推論の前駆としての選択学習:話者の発話から情報を受け取るとき、与えられるのは発話された情報の内容だけでない。聞き手は発話に込められた意図や発話者の確信度を含めた情報を受け取る。そういった発話内に含まれる意図や確信度を判断する能力が言語学習以前に備わっているものなのかを確かめるため、24カ月の乳児が確信度を選択的に学習するのかを指差し提示を用いて心理実験により検討した。実験結果の信頼性を向上させるため今後も実験を継続する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

(1)について
音象徴に関する11か月児の脳波データを昨年度収集済みであり、H24年度は語意習得を始める以前の乳児(6カ月児)でデータ収集を行う予定であったが、その前に成人のデータをとり、11か月児と比較することにした。乳児と成人の結果は電極対が違うなど均質には扱うことができないが、比較検討を行うため、脳波データの事象関連電 位分析と大域的位相同期分析を並行して進めている。
(2)について
ヒトの乳幼児とチンパンジーとの対称性推論の比較については、実験データの収集分析は既に終了しており、論文としての成果公開を行う予定である。
(3)について
話者の確信度をイントネーションから判断し、新奇な語意の推論に用いることをできるか子どもがいつからできるのかを検討する実験は、今年度に24カ月で実験デザインと刺激の作成を行うとともにパイロットデータを収集した。

今後の研究の推進方策

(1)については成人の脳波データの解析を進め、11カ月児と比較するとともに、6カ月乳児でのデータ収集を行う。(2)については、データの解析をさらに進めると同時に、関連文献の吟味を行い、国際学術誌への投稿のための準備を進める。(3)についてはパイロットデータを検討し、実験刺激、プロトコルを最終決定して、24か月乳児を対象に本格的なデータ収集を行う。24か月のデータの傾向がわかり次第、さらに年少[20か月]あるいは年長(32か月)に対称年齢を広げて、話者の確信度の推定能力がいつごろからできるのか、その推論を語意の推論の制約として使えるようになるのはいつ頃からなのか、どのように発達するのかをさらに検討する。

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (7件) 図書 (5件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] All giraffes have female-specific properties: Influence of grammatical gender on deductive reasoning about sex-specific properties in German speakers.2013

    • 著者名/発表者名
      Mutsumi Imai
    • 雑誌名

      Cognitive Science

      巻: 37 ページ: 印刷中

    • 査読あり
  • [学会発表] 言語経験による音象徴処理の変化2012

    • 著者名/発表者名
      浅野倫子
    • 学会等名
      日本認知科学会第29回大会
    • 発表場所
      仙台国際センター(宮城県)
    • 年月日
      2012-12-15
  • [学会発表] Gaze - contingency パラダイムを用いた乳児における行為の意図性の 評価2012

    • 著者名/発表者名
      宮崎美智子
    • 学会等名
      日本認知科学会第29回大会
    • 発表場所
      仙台国際センター(宮城県)
    • 年月日
      2012-12-14
  • [学会発表] The Role of the Amygdala in the Process of Humour Appreciation.2012

    • 著者名/発表者名
      Tagiru Nakamura
    • 学会等名
      34th annual meeting of the Cognitive Science Society
    • 発表場所
      Sapporo convention center (Hokkaido)
    • 年月日
      2012-08-03
  • [学会発表] Developmental Adjustment of Iconic Language in Care-Takers’ Input2012

    • 著者名/発表者名
      Masato Ohba
    • 学会等名
      34th annual meeting of the Cognitive Science Society
    • 発表場所
      Sapporo convention center (Hokkaido)
    • 年月日
      2012-08-03
  • [学会発表] The Internal Structures of Sound-Symbolic Systems: The Universal and Language-Specific Portions of Sound Symbolism.2012

    • 著者名/発表者名
      Saji Noburo
    • 学会等名
      34th annual meeting of the Cognitive Science Society
    • 発表場所
      Sapporo convention center (Hokkaido)
    • 年月日
      2012-08-02
  • [学会発表] Preverbal infants are sensitive to sound symbolism: Evidence from an ERP study. Paper presented at the symposium.2012

    • 著者名/発表者名
      Michiko Asano
    • 学会等名
      2012 International Conference on Infant Studies
    • 発表場所
      The Hilton Minneapolis (Minnesota)
    • 年月日
      2012-06-07
  • [学会発表] Large-scale phase synchrony of brain activity in preverbal infants detecting sound symbolism.2012

    • 著者名/発表者名
      Keiichi Kitajo
    • 学会等名
      19th Annual Cognitive Neuroscience Society
    • 発表場所
      The Palmer House Hilton Hotel (Illinois)
    • 年月日
      2012-04-01
  • [図書] ことばの発達の謎を解く2013

    • 著者名/発表者名
      今井むつみ
    • 総ページ数
      240
    • 出版者
      筑摩書店
  • [図書] 子どものうそ 大人の皮肉―ことばのオモテとウラがわかるには2013

    • 著者名/発表者名
      松井智子
    • 総ページ数
      印刷中
    • 出版者
      岩波書店
  • [図書] The nature of the count/mass distinction in Japanese. (In Handbook of Japanese Psycholinguistics.)2013

    • 著者名/発表者名
      J.J. Nakayama
    • 総ページ数
      印刷中
    • 出版者
      De Gruyter Mouton
  • [図書] Pragmatic Development: Trends in Language Acquisition Research2013

    • 著者名/発表者名
      D. Matthews
    • 総ページ数
      印刷中
    • 出版者
      John Benjamins.
  • [図書] なるほど!赤ちゃん学―ここまでわかった赤ちゃんの不思議―2012

    • 著者名/発表者名
      玉川大学赤ちゃんラボ
    • 総ページ数
      222
    • 出版者
      新潮社
  • [備考] MUTSUMI IMAI LAB

    • URL

      http://cogpsy.sfc.keio.ac.jp/imai/

  • [備考] 認知発達ロボティクス研究室

    • URL

      http://sites.google.com/site/okadamania/

URL: 

公開日: 2018-02-02  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi