研究領域 | 予測と意思決定の脳内計算機構の解明による人間理解と応用 |
研究課題/領域番号 |
23120006
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
坂上 雅道 玉川大学, 脳科学研究所, 教授 (10225782)
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キーワード | 前頭前野 / 推論 / 目的志向性 / 単一ニューロン / 局所場電位 |
研究概要 |
意思決定は、事象と報酬の経験的関係を客観的・確率的に結び付けて価値を計算するモデルフリーシステムと、直接経験によって獲得された知識をカテゴリーや論理によって結びつけ、直接経験していない価値の予測を可能にするモデルベースシステムの協調と競合によって成り立っている。本提案では、意思決定課題を訓練したサルの前頭前野ネットワークに複数の電極を刺入し、神経活動を記録、相互作用の解析を行うことにより、前頭前野においてどのように内部モデルがコードされ、それがどのように脳内シミュレーションに使われるのかを明らかにする。同様の解析を前頭前野ネットワークと大脳基底核ネットワークの間で行うことにより、2つのシステムの間の相互作用を調べる。 平成23年度は、以下にあげる成果を得た。 1.推移的推論課題を訓練したサルの前頭前野外側部と大脳基底核線条体それぞれに、単一ニューロン活動と局所場電位が記録できる電極を刺入し、同時記録を行った。単一ニューロン活動の記録から、推移的推論に関わる前頭前野と大脳基底核の機能的役割の違いを明らかにするとともに、局所場電位の相関解析・因果分析から、報酬予測に関する情報は、前頭前野外側部から大脳基底核線条体に伝えられていることを明らかにした。この成果は、北米神経科学学会や日本心理学会大会や、各種シンポジウム・講演で発表した。 2.報酬の自由選択vs.強制選択課題については、昨年度中にサルの訓練が完了し、課題遂行中の単一ニューロン活動と局所場電位の記録を始めた。ここでは、前頭前野外側部から最大合計128チャンネルの同時記録を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
推移的推論課題については、単一ニューロン活動の記録実験の成果を論文にまとめ、まもなく投稿する予定である。同課題における局所場電位の記録実験についても順調に進んでおり、平成24年度中に解析を終了する予定である。自由選択vs.強制選択課題については、単一ニューロン活動の記録は終了し現在解析を行っている。局所場電位については、一頭のサルの記録の状態が良くなかったため、現在再度記録を行っている。平成24年度中には終了する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
自由選択vs強制選択課題を使った実験については、局所場電位記録の状態が、一頭のサルで良くなかったため、現在再度記録を行っているが、平成24年度中には終了する予定である。そのほかの実験は、おおむね予定通りに進んでいる。前頭前野と大脳基底核の情報の相互作用の研究について、アメリカと日本の研究者からウイルスベクターの提供を受けるめどがついたため、平成24年度後半、あるいは平成25年度から新たな手法を使った実験を開始できることになった。現在、その準備を行っている。
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