研究領域 | 予測と意思決定の脳内計算機構の解明による人間理解と応用 |
研究課題/領域番号 |
23120008
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
岡本 仁 独立行政法人理化学研究所, 発生遺伝子制御研究チーム, シニア・チームリーダー (40183769)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ゼブラフィッシュ / 意思決定 / 終脳 / レーザー顕微鏡 / トランスジェニック |
研究実績の概要 |
平成24年度までの研究で、哺乳類の終脳の各部位に相当するゼブラフィッシュ終脳の各部位の興奮性神経細胞の活動を観察するために、CaMKIIα、zbtb20の蛋白質転写領域をGal4-VP16で置換したBACクローンを持つトランスジェニック系統を作成した。さらに、Tg[vglut2:gal4-vp16]系統と掛け合わせることによって、ゼブラフィッシュ終脳の外套部の神経細胞のほぼすべての興奮性神経細胞での遺伝子発現を制御できるようになった。またTg[gad67:gal4-vp16]系統を作成し、抑制性神経細胞での遺伝子発現の制御を可能にした。さらに、神経細胞集団の振る舞いを個々の細胞レベルで観察する系の確立能動的回避学習の成立後に、条件刺激で活性化される終脳の細胞集団の振る舞いを、個々の細胞のレベルで観察するために、高速高感度ビデオカメラの代りに、2光子レーザー顕微鏡を用いて、外套部表面の個々の神経細胞の活動を、集団で記録する実験系の確立を目指した研究をおこなった。其の結果、終脳神経細胞の神経活動を、生きた成魚を用いて観察するために、視覚刺激としての動画を含む任意の画像イメージの提示と、超高感度センサーを使った蛍光観察が、同時に可能となる、全く新しい2光子レーザー顕微鏡制御システムを開発し、これらのトランスジェニック系統と新しい2光子レーザー顕微鏡制御システムを用いて、あらかじめ能動的回避学習を習得したゼブラフィッシュの終脳の神経細胞が、条件刺激の提示によって、どのような活動を示すかの詳細な観察を開始した。更に、遊泳中のゼブラフィッシュの脳にレーザー光を照射することによって、ChannelrhodopsinやHalorhodopsinを発現する神経細胞の活動を任意に制御できるオプトジェネティックス・システムを開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本計画は、脊椎動物で,最も単純な構造の脳を持つゼブラフィッシュ成魚の終脳を使って,意思決定時の神経細胞の活動を可視化し、意思決定の神経メカニズムを究明することが目的である。これまでに、研究に必要なトランスジェニック系統を作製し、これらの系統の脳の神経活動を、2光子レーザー顕微鏡を使って観察できるシステムを構築した。更に、世界で初めて、自由遊泳中のゼブラフィッシュ成魚の脳の神経活動を、オプトジェネティックスを用いて制御できる実験法を確立した。以上のことから,研究は計画以上に順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに確立した実験システムを用いて,神経細胞の活動の観察を行う。 またオプトジェネティックスを用いて神経活動を制御することによって、意思決定プログラムの成立におけるセロトニン入力の役割を明らかにする。
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