研究概要 |
COX2阻害剤celecoxibの主代謝物であるSC-62807はPET分子プローブ化され、胆管側トランスポーターの機能評価プローブとして期待されている。SC-62807がhumanおよびmouse Bcrpの基質となること、また肝シヌソイド側トランスポーター(OATP1B1、1B3)の基質となることを見いだし、ヒトにおいても効率的な肝胆系輸送をうけることが示唆された。ヒト肝臓ならびに強制発現系におけるBCRP蛋白発現量を測定し、ヒト肝臓におけるBCRP輸送能を外挿した。マウス肝細胞中のCYP2A5,2B10,2E1,2D10,3A11,シトクロームb5(Cb5)、NADPHシトクロームP450還元酵素、およびミクロソームマーカー蛋白としてMTTPおよびBiP、さらにHNF4α、PXR、CAR、およびGRを一斉分析することに成功した。マウス肝細胞をNano Culture Plate(SCIVAX)を用いて3次元培養することでスフェロイドを形成させ、CYPの発現量を比較的高く保つことができることを確認するとともに、リファンピシンなどの誘導剤で処理することで発現量が分子種特異的に変動することを、本分析法を用いることにより確認できた。CYPの絶対定量にあたり、サンプル中の蛋白安定性について検討した。安定性は分子種により異なるが、熱処理(80℃、10分間)あるいはプロテアーゼ阻害剤カクテルの添加で抑制されたことから、こうした処理を加えることによりartifactを抑制することができる。薬物トランスポーター(OCT2、MATE1、MATE2-K)についても、定量用のペプチドデザイン、トリプシン消化条件を検討した。OCT2およびMATE1については、強制発現系ならびにヒト腎検体で発現量の絶対値を測定することができた。一方、MATE2-Kについては、強制発現系ならびにヒト腎検体では予想されるペプチド断片を検出することができず、さらなる解析を必要とする。
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