計画研究
昨年度から解析に取り組んで来たテラプレビルによる薬物間相互作用について、クラスターニュートン法を用いて、競合阻害ならびにMechanism-based阻害(MBI)を組み込んだモデルでの最適化を試みた。その結果、競合阻害に関してパラメータの収束値が得られたものの、MBIに関連したパラメータの収束値は得られなかった。In vitroでは両阻害が生じることが知られているが、報告されている臨床データではMBIに関連したパラメータ決定には不十分であることが示唆された。薬物間相互作用が被相互作用薬の血中濃度の時間推移に与える影響は、相互作用の標的分子が関連する経路の寄与率に依存する。臨床試験のデータに基づいた解析を実施する場合、この消失経路の割合(fm)と標的分子に対する阻害定数(Ki)を一義的に決定することは困難であり、これが生理学的速度論モデルを用いた相互作用の解析を阻んできた要因である。そこで、未変化体だけではなく、標的分子の代謝酵素で生成する代謝物の動態変動をも考慮することで、この問題を解決できることが期待される。しかし、未変化体および代謝物のモデルを扱うためパラメータ数が非常に多くなることが問題点となる。前年度確立したクラスターニュートン法を用いることで、この初期値問題を克服することが期待される。CYP3A4が関連した薬物間相互作用について、本方法論を適用した結果、代謝物の動態変動を考慮しない(未変化体の動態変動のみを考慮)場合に比べて、fmとKi値に収束が認められた。
2: おおむね順調に進展している
生理学的速度論モデルを用いた体内動態解析法として、クラスターニュートン法を開発し、in vivoでのパラメータ決定を実現した。本方法論を用いることで、in vivoでの阻害定数やクリアランスを決定することが可能であり、in vitro試験に基づいた体内動態予測・薬物間相互作用予測の実現が大きく前進した。
クラスターニュートン法を用いて薬物間相互作用解析の実例を更に収集する。特に、未変化体だけではなく、代謝酵素特異的に生成する代謝物の動態を織り込むことで、精度の高い解析の実現を目指す。
すべて 2013 その他
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BMC Systems Biology
巻: 7 ページ: S3
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