研究領域 | 量子古典融合アルゴリズムが拓く計算物質科学 |
研究課題/領域番号 |
23H03819
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
水上 渉 大阪大学, 量子情報・量子生命研究センター, 准教授 (10732969)
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研究分担者 |
藤堂 眞治 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (10291337)
御手洗 光祐 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 准教授 (50855111)
杉崎 研司 慶應義塾大学, 理工学研究科(矢上), 特任准教授 (70514529)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 量子回路 / QSCI / 量子化学 / 物性物理 / 量子古典ハイブリッドアルゴリズム / Classical Shadows |
研究実績の概要 |
本研究では、量子多体系シミュレーションと量子コンピューティングの優れた対応関係に着目し、機能性物質のシミュレーションに特化した量子回路設計を目指している。具体的には、物質シミュレーションに特化した量子古典融合アルゴリズム(QCH)を検討し、物性物理や理論化学の知見を応用してQCHの問題点を解決・緩和することで、実用的な量子ビット数を100倍のオーダーに増やすことを目標としている。初年度であるR5年度は、QCHの最大の問題点である膨大な測定数を減らすことを念頭に置いた手法開発に取り組んだ。当初予定していたClassical Shadowsを使ったアプローチは、オーバーヘッドが大きく現実的なショット予算では必ずしも最適ではないことが判明したため、Computational Basis SamplingやQuantum Selected Configuration Interactionといった手法を軸とした開発に方針を転換した。さらに、ADAPT-QSCIという量子コンピュータへの依存度を減らした量子回路のパラメータ決定法を新たに提案した。加えて、A01班と共同で量子不純物問題に適した量子回路設計なども行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
物質系に対して現実的なショット予算で動きうる量子回路設計手法を開発し、量子アルゴリズムをDMFTなどに適用する際に重要となる量子不純物問題に適した量子回路の設計にも成功した。これにより、モデルハミルトニアンも含む広い意味での物質のシミュレーションに特化した量子回路設計において着実な成果を得ることができた。さらに、量子位相推定のための量子回路をコンパクト化するテクニックや、第一原理ハミルトニアンの測定を効率的に行うアルゴリズムの提案など、当初の予想を上回る成果も得られた。 以上の進捗状況を鑑みて、現在までの進捗状況の区分は「予想以上に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、令和5年度の成果をもとに、より現実的なモデルや物質を解くためのアルゴリズム開発を行う。量子コンピュータで扱える自由度は量子ビット数によって制限されるため、物性物理や化学で広く興味が持たれている対象に適用する際には、量子コンピュータで直接扱えない自由度をいかに考慮するかが実用上の重要な課題となる。この問題に対処するため、古典コンピューティングと量子コンピューティングをより高度に融合させたアルゴリズム開発を行う予定である。この取り組みにより、より大規模で複雑な物質のシミュレーションが可能になると期待される。
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