研究領域 | コントラリアン生物学の創生:逆張り戦略がもたらす新しい社会均衡のしくみ |
研究課題/領域番号 |
23H03843
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
宮本 健太郎 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, チームリーダー (20778047)
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研究分担者 |
林 明明 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 研究員 (90726556)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 社会的メタ認知 / オンライン行動実験 / 集団行動実験 / 採餌課題 |
研究実績の概要 |
健常ヒト成人が同時に採餌探索を行った場合に、同調行動や逆張り行動がどのようにして出現するのか、そのダイナミクスが外部環境の変化に伴ってどう変遷していくのかを、厳密にコントロールされた条件で検証するために大規模同時オンライン行動実験を実施した。具体的には174名の実験参加者に、Web上で同時に2択の報酬選択課題を行ってもらった。課題では、報酬量は試行ごとに変動するほか、それぞれの選択肢を選ぶ人数も変動するので、その両方を考慮して、山分け後もらえる報酬の合計が最大になるような意思決定を求めた。実験の結果、逆張り行動が実際に生じ、加えて、その逆張り行動が環境の変化に応じて発現する可塑的で柔軟なものであることがわかった。また、逆張り行動の程度を定量化するための手法も確立した。 ヒトにおいて、柔軟な逆張り戦略を可能にする脳のメカニズムの研究も進展した。具体的には、自身のメタ認知能力を、他者の知覚成績の予測のために投影して用いる社会的メタ認知能力の神経基盤について、健常ヒト成人を対象にしたfMRI・TMS研究によって明らかにし、前外側前頭葉が社会的メタ認知に基づいた他者の認知成績予測に欠かせない役割を果たすことを発見した。逆張りを実現するためには、他者の保持している情報に関する知識をもとに、他者に自己の内省を投影して、他者の行動を予測する必要があるが、そのために社会的メタ認知の神経基盤である前外側前頭葉の貢献が強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
同時に100名以上の参加者が参加するオンライン行動実験は先例が無かったが、本年度の研究期間中に、無事に行動実験システムを構築し、実験を実施することが出来た。現在、計測したデータを用いて、様々な計量的手法を組み合わせて解析を進めている。 ヒトの社会的メタ認知の神経基盤を解明した研究については、成果を論文にまとめて投稿した。現在改稿を経て再度査読中である。
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今後の研究の推進方策 |
オンライン行動実験の解析を進め、コントラリアン行動が、どのようにして生じるのか、そのメカニズムを明らかにする。 加えて、オンライン行動実験とfMRI計測を組み合わせた実験を開始し、コントラリアン行動生成に関わる脳のメカニズムを解明することを目標とする。
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