研究実績の概要 |
大泉はA01班の土谷らが記録した色の類似度判定から推定される色クオリア構造の解析を行った.異なる被験者間で,クオリア構造が同等の構造を持っているかどうかを調べるために,Gromov-Wasserstein最適輸送を用いた教師なしアライメントの方法を提案した(Kawakita et al., 2023, psyArxiv).その結果,定型色覚の被験者グループの間で構造が揃うこと,定型色覚と非定型色覚では構造が揃わないことなどを示した.また,同様の方法を大規模言語モデルに適用し,モデルの色類似度構造が人間の色類似度構造に揃うことも示した(Kawakita et al., 2023, arXiv).さらに,同様の方法論を異なるマウスの神経活動同士の比較や,異なるモデル間の比較として適用し,pythonのツールボックスとして公開した(Sasaki et al., 2023, bioRxiv).
分担者の堀井は感情クオリア構造に対応する情報構造を表現学習可能な深層学習モデルやその学習メカニズムに関する検証を行った.Transformerを画像入力に拡張したVision Transformerにおいて,人の感情表出画像の表現学習の際に人の身体反応(内受容感覚)を模した情報と,言語情報を対照学習の基準情報として利用することで,それぞれの情報が表現学習に与える影響を調査した.その結果,人の身体反応を模した情報を対照学習に利用した条件において,感情の表現方法として広く知られているRussellの円環モデルに類似した情報構造が獲得されることを示した.また人の乳幼児が次第に言語を学習するように,対照学習に利用する基準情報の割合を,身体反応を模したものから言語情報に次第に変更することで,より円環モデルに類似した情報構造が獲得されることを示した(野村&堀井,2023,RSJ2023).
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