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2023 年度 実績報告書

先史人類の人口動態に関する研究

計画研究

研究領域日本列島域における先史人類史の統合生物考古学的研究ー令和の考古学改新ー
研究課題/領域番号 23H04844
研究機関立命館大学

研究代表者

中村 大  立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 准教授 (50296787)

研究分担者 河合 洋介  国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 副プロジェクト長 (30435515)
高瀬 克範  北海道大学, 文学研究院, 教授 (00347254)
山口 雄治  岡山大学, 文明動態学研究所, 助教 (00632796)
NOXON Corey・Tyler  立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 助教 (70906924)
研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2028-03-31
キーワード先史時代 / 人口動態 / ゲノム解析 / 統計解析 / 同位体分析 / 放射性炭素年代
研究実績の概要

東日本の先史時代については、住居跡数と遺跡数を併用した人口推定手法を開発し、縄文時代を対象とした人口動態の推定を実施した。特性の異なるデータを組み合わせてバイアスを軽減し、妥当性の高い推定をめざした。東北北部の縄文早期~晩期(10500~2500年前)における数回の大きな人口増減を明らかにできた。また、北海道北部・東部の遺跡から出土したキタオットセイとマダラの窒素・炭素・酸素同位体分析とこれまでの人口動態推定をもとに、海洋生産性と人口動態の関係性を検討した。擦文文化終末期以降の人口減少が海洋生産性の低下と関係している可能性がある一方、海洋生産性が低いとみられるオホーツク文化期には人口増がみられ、両者の関係が複雑であることが判明した。加えて、異なる住居形態に必要な材料とエネルギーの定量化分析を進めた。住居タイプと移動性の関係は人口推定の補正項として活用できる。
西日本の先史時代については、縄文時代の貯蔵穴群について形成過程の分析を進めた。住居跡の発見例が少ないため、貯蔵穴の数と容量も人口規模推定の根拠として重要である。岡山県の遺跡で発見された貯蔵穴群の放射性炭素年代測定を実施し、出土土器から想定されていたよりも長期にわたる使用の実態を明らかにした。これは今後の人口推定に役立つデータである。
ゲノム解析による先史人口の推定ではゲノム情報のデータベース構築を進めた。現代人ゲノムデータは、ナショナルセンターバイオバンクネットワーク、沖縄バイオインフォメーションバンクなどから全ゲノムシークエンス解析(WGS解析)で得られたゲノムデータを収集しデータ統合を行った。古代人ゲノムデータは、ヤポネシアゲノム研究と公的データベースから東アジアを主としたデータを取得した。現代人のハプロタイプ情報による推測(imputation)を行い、全ゲノム解析に匹敵する解析データセットを構築した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、先史時代の人口動態の推定に用いる各種のデータ構築と分析手法の改良を目標として研究を進めた。データの取得については、動物遺存体の同位体分析、現代人および古代人のゲノムデータ、住居形態ごとの必要な資源とエネルギーの見積もりについてはほぼ予定通り進展している。西日本の遺跡や土器の年代測定については想定以上に分析サンプルの確保が難しい状況であった。しかしこれについては今後本格的に進める地形環境データの解析などで補完していくことも可能と考えられるため、現状では深刻な遅れとは考えていない。また、東日本の遺跡と住居跡のデータベース構築については本年度に固有の事情により一部について収集に遅れが生じているものの、次年度に回復可能と判断している。
分析手法の改良については着実な進展があり、今後データの蓄積が進めば良好な分析結果を得ることができると期待される。考古資料にもとづく人口動態推定については、住居跡数と遺跡数を併用し統計的手法を用いて100年幅ごとの年間平均人口数を推定する方法を開発したことは大きな成果である。また、動物遺存体の同位体分析と人口推定をセットにした分析は、環境と人口との関係性を解明するとともに人口推定の妥当性を評価することにも役立つ。これにゲノムデータにもとづく人口推定を加えれば多角的に先史時代の人口動態を推定する手法の確立に近づく。分析手法の改良については、こうした先史時代人口の動態復元に関わる総合的な分析手法のイメージを掴むことができた点で着実に成果を上げている考える。
以上を総合し、現在までの進捗状況についてはおおむね順調と評価した。

今後の研究の推進方策

地域やデータ種別ごとの人口動態推定については、引き続きデータの構築と分析手法の改良を進める。これにより分析対象地域を拡大しながら着実な分析結果を生みだしていくことが本研究課題を推進する原動力となる。
それとともに、今後は本研究班内および他の計画研究班とのコラボレーションを積極的に進めていく予定である。まず、研究班内では同じ地方・地域を対象に、考古資料(遺跡、住居跡)、放射性炭素年代の測定値、ゲノムデータの異なるデータと分析手法で人口動態を行い、それぞれの分析結果を比較検討する研究を推進する。本研究課題が主な対象とする縄文~古墳時代には戸籍など直接人数を数えることができる史料はほとんどない。したがって、人口と比例関係にある何らかのデータにもとづく間接的手法で人口動態を推定することになる。この場合、各種のデータにはそれぞれ長所と短所があり、複数種類のデータや分析手法による複数の推定結果を比較することで妥当性の高い推定範囲を見極めていく必要がある。また、この比較分析により各分析手法の見直すべき点、強みと弱みがより明確になり、個々の人口推定研究のさらなる進展が期待できる。
加えて、人口推定を扱うあるいは人口情報が研究の進展に寄与できる他の計画研究班とのコラボレーションも進めていく予定である。こうした広範な研究協同は、本学術変革領域研究がめざす日本列島域における先史人類史の総合的叙述と統合生物考古学的研究の確立に必要なものである。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] キタオットセイ遺存体のDNA分析および炭素・窒素・酸素安定同位体分析-北海道博物館所蔵の北見市常呂栄浦第一・稚内市大岬1遺跡出土資料-2024

    • 著者名/発表者名
      高瀬克範・西田義憲・右代啓視
    • 雑誌名

      北海道博物館研究紀要

      巻: 第9号 ページ: 37-52

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 岡山の縄文時代:環境・文化・人口2024

    • 著者名/発表者名
      山口雄治
    • 雑誌名

      岡山の自然と文化

      巻: 43 ページ: 53-102

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 北太平洋東西の比較考古学-展望と課題-2024

    • 著者名/発表者名
      高瀬克範
    • 雑誌名

      北太平洋の先住民文化-歴史・言語・社会-

      巻: - ページ: 59-71

  • [雑誌論文] Exploring the genetic diversity of the Japanese population: Insights from a large-scale whole genome sequencing analysis2023

    • 著者名/発表者名
      KAWAI Yosuke, WATANABE Yusuke, OMAE Yosuke, MIYAHARA Reiko, KHOR Seik-Soon, NOIRI Eisei,et al.
    • 雑誌名

      PLOS Genetics

      巻: 19(12) ページ: e1010625

    • DOI

      10.1371/journal.pgen.1010625

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 本州島東北部における弥生農業の開始-手工業生産にもとづく新たな理解-2023

    • 著者名/発表者名
      高瀬克範
    • 雑誌名

      北海道大学文学研究院紀要

      巻: 第170号 ページ: 59-136

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] Survey of the Present Conditions of Prehistoric Architectural Reconstructions in the Koshin-etsu Region of Japan2023

    • 著者名/発表者名
      ERTL John,YOSHIDA Yasuyuki,NOXON Corey
    • 雑誌名

      慶應義塾大学日吉紀要社会科学

      巻: 34 ページ: 1-56

    • オープンアクセス
  • [学会発表] GIS Analysis of Stone Circles in the Jomon Period and Their Application to Cultural Heritage2024

    • 著者名/発表者名
      NAKAMURA Oki
    • 学会等名
      BK21 Four・The 3rd International Conference
    • 国際学会
  • [学会発表] An Overview of Population Estimation Methodologies: Past and Present, from Japan and Beyond2024

    • 著者名/発表者名
      NOXON Corey
    • 学会等名
      学術変革領域研究(A)統合生物考古学・2023年度第2回研究集会
  • [学会発表] 土器量の変化から人口変化をイメージする-京都大学構内遺跡の事例研究-2023

    • 著者名/発表者名
      矢野健一・NOXON Corey
    • 学会等名
      考古学研究会・第69回研究集会
  • [学会発表] 先史人類の人口動態に関する研究2023

    • 著者名/発表者名
      中村大
    • 学会等名
      学術変革領域研究(A)統合生物考古学・2023年度第1回研究集会
  • [学会発表] 貯蔵穴群の形成過程-岡山県南方前池遺跡の年代測定結果から-2023

    • 著者名/発表者名
      山口雄治
    • 学会等名
      第89回日本考古学協会総会・大会
  • [学会発表] 狩猟採集社会から農耕社会へ-縄文/弥生移行期の岡山-2023

    • 著者名/発表者名
      山口雄治
    • 学会等名
      倉敷埋蔵文化財センター令和5年度秋の考古学講座「考古学からみた時代の画期」
    • 招待講演
  • [産業財産権] モデルの作成支援システム、コンピュータ実装方法及びコンピュータプラグラム2023

    • 発明者名
      中村大・後藤智
    • 権利者名
      中村大・後藤智
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2023-146293

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公開日: 2024-12-25  

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