計画研究
本年度は多くの動物を対象としたゲノム解析や古代ゲノム解析を行った.主要な成果を以下にまとめる.1)世界中から集められたハツカネズミ全ゲノム解析を行い,日本列島および中国南部における亜種ゲノムの混合様式について明らかにした.日本列島においては,これまで北海道・東北にcastaneus亜種,それ以南にmusculus亜種が分布していると考えられてきたが,日本海側の個体がよりcastaneus亜種の遺伝的成分が高いことが示された.その他,日本列島の個体において,免疫にかかわる遺伝子やフェロモンの受容体において,castaneus亜種由来のゲノムが有意に多くなっている領域があることがわかった.これは,南方由来のゲノムが何らかの理由で日本列島において選択を受けて広がったせいだと考えられる.2)沖縄や東南アジア由来の個体のジャコウネズミ全ゲノム解析を行い,1)沖縄の個体は自然分布ではなく東南アジアから渡来したものである.2)移入は一度ではなく,その後も繰り返し起こってきた.ということを示した.ミトコンドリアゲノムの解析では,最初の渡来時期は約3000年前と推定された.成果は次の論文で発表されました.3)ニホンオオカミと日本犬の高深度ゲノム解析を通して,1)ニホンオオカミは単系統であり,遺伝的に他のオオカミと異なるグループであること.2)ニホンオオカミはイヌに最も遺伝的に近縁なオオカミであること.3)ユーラシア大陸東側のイヌにはニホンオオカミの祖先がもっていたゲノムが含まれていること.などが明らかになった.これらの結果はイヌの起源が東アジアであることをサポートしている.また,縄文時代の犬のミトコンドリア解析も行なった.
1: 当初の計画以上に進展している
計画の中心として据えている動物種以外の生物種についても着実に成果が出ており,今後様々な成果について論文発表が可能であると期待することができる.
これまで成果のでたハツカネズミ,ジャコウネズミ,イヌ,オオカミについては,研究を更に進めより詳細な解析によって人とのかかわりを明らかにしていく.これらに加え,ヤマネコ,ラット,イノシシ,ブタなどについても研究を進めて行く.また,公募班と連携し,多くの生物について古代ゲノム解析等を進めていき,領域の発展に貢献する.
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (14件) (うち国際共著 5件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (27件) (うち国際学会 9件、 招待講演 10件) 図書 (2件)
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