計画研究
本年度は、以下の項目を中心に研究を実施した。1. ウルシ:本年度は、中国湖北省のサンプルを中心とした現生ウルシの全ゲノム解析を行った。加えて、京都周辺のウルシを自然の山林からサンプリングし、これも全ゲノム解析を行った。さらに、ウルシの古代DNA分析を進めるための基礎研究として、現在の生漆にDNAが含まれているかどうかを検証した。2.アズキ:本年度は、現生アズキと野生種ヤブツルアズキのゲノム解析を実施した。その結果、日本列島の栽培アズキが野生種ヤブツルアズキに最も近縁であり、アズキが日本列島起源の栽培植物である可能性が極めて高いことが示された。また、縄文時代の遺跡から出土したアズキ亜属の炭化種子のサイズ変化と種皮厚の変化を調べた結果、縄文時代から弥生時代までのアズキ亜属の種皮厚は、野生種ヤブツルアズキの変異内に収まっており、種皮厚の形質変化は起きていないことが明らかになった。3.イネ:本年度は、イネの種子脱粒性の喪失に関わる原因遺伝子の特定を進めた。その結果、イネの種子脱粒性を制御する遺伝子は少なくとも3つ(sh4,qsh1,qsh3)あり、穂の開帳性を制御する遺伝子1つ(SPR3)との組み合わせにより、脱粒性が喪失されることが明らかとなった。突帯文期から弥生時代のイネにこれらの変異があるかどうかを古代DNAと形態(脱粒痕)の双方から検討することが今後の課題となった。古代DNA分析については、鳥取県青谷上寺地遺跡において、弥生時代の堆積物から未炭化のイネの籾殻を多数採取した。これについてイネの古代DNA抽出に成功しており、すでに5.2xのゲノム配列の決定を行なっている。
1: 当初の計画以上に進展している
イネの古代DNAの抽出に成功し、ゲノム解析が当初の予定よりも早く進んでいる。
今後も予定通り、ウルシ、アズキ、イネを中心にDNA解析と遺跡出土植物種子の形態解析を進める。古代DNA分析が当初の予定よりも順調に進んでいるため、この解析を優先して進める予定である。
すべて 2024 2023 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Nature Plants
巻: 9 ページ: 1236~1251
10.1038/s41477-023-01474-1
Breeding Science
巻: 73 ページ: 117~131
10.1270/jsbbs.22074
Molecular Genetics and Genomics
巻: 298 ページ: 943~953
10.1007/s00438-023-02027-z
人類誌集報
巻: 18 ページ: 21~26
季刊考古学
巻: 166 ページ: 40~43
https://i-bioarchaeology.org/