脳血管疾患もやもや病の責任遺伝子産物であるユビキチンリガーゼ・ミステリン(別名RNF213)は、生理的・病的条件下において脂肪滴、サルモネラ菌など、細胞内・外に由来する多様な細胞内標的構造体を認識し、それらの表面を広汎にユビキチン化する。このユビキチン化の下流で、各条件における特異的タンパク質群の寿命制御が起こると考えられるが、その実態・メカニズムはほとんど解明されていない。今年度までに、ミステリンが各標的構造体に効率的かつ特異的に局在化し、標的表面を広汎にユビキチン化する培養細胞システムを構築し、ユビキチン・レムナントを指標とした質量分析法を用いて、各条件におけるユビキチン化基質群およびそのユビキチン化様式の精密同定を行った。この解析は次年度以降にも引き続き行っていくが、幾つかの条件においては、基質群およびそのユビキチン化様式の詳細について、今年度までに決定することができた。これら基質群の細胞内動態およびプロテアソーム経路、リソソーム経路を含む寿命制御経路、その結果として起こる細胞機能制御について検討を行い、一部の基質群においては特異的な寿命制御変容が起こることや、細胞機能に有意な影響をもたらすらしいことを見出した。併せて、ここで見出されたタンパク質寿命制御の変容が組織・個体レベルに及ぼす影響の解析や、ミステリンの分子内制御メカニズム、標的機能制御メカニズムの解析などを進め、一定の進捗があった。
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