• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2023 年度 実績報告書

プロテアソームによるタンパク質寿命決定の仕組み

計画研究

研究領域タンパク質寿命が制御するシン・バイオロジー
研究課題/領域番号 23H04921
研究機関東京大学

研究代表者

佐伯 泰  東京大学, 医科学研究所, 教授 (80462779)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2028-03-31
キーワードプロテアソーム / タンパク質分解 / タンパク質寿命 / プロテオーム / 液-液相分離
研究実績の概要

(計画1)シャトル分子群によるタンパク質寿命制御:プロテアソームはタイムリーかつ選択的なタンパク質分解によって広範なタンパク質の寿命を決定するが、その過程の詳細な分子機構は未だ不明である。これまで、ユビキチン化基質をプロテアソームにリクルートするシャトル分子群やユビキチン選択的ATPase p97がプロテアソーム基質の選別とプロセシングに関与することを報告してきたが、どのような基質選択性があるのは不明である。本年度はまず、質量分析を用いた高深度比較プロテオーム解析について、データ非依存解析(DIA)法を導入することで、簡便かつ高精度に約9,000種類のタンパク質を簡便に比較定量することを可能とした。次いで、経時的なCHX処理と組み合わせることでMSを用いた網羅的タンパク質寿命計測が可能となった。シャトル分子群(RAD23A/B、UBQLN1/2/4)のsiRNAノックダウンと上記CHX-DIA-MS測定によりRAD23A/B依存的に分解されるタンパク質群を50種類程度同定した。
(計画2)液-液相分離によるプロテアソーム分解制御機構:高浸透圧ストレスやATPレベル低下(ATPストレス)によってユビキチン化基質を含有するプロテアソーム液滴が形成すること、シャトル分子RAD23BとUBQLN2が相分離ドライバーとして機能することを見出している。本年度は、シャトル分子とプロテアソームとの相互作用を破壊する人工抗体を細胞内にインジェクションすることで、プロテアソーム液滴を迅速に破壊する新規手法を開発した。また、高浸透圧ストレスとATPストレスはともにプロテオスタシスを攪乱することが想定されるが、これまでプロテオームレベルでの評価はなされていなかった。そこで、高浸透圧ストレスまたはATPストレスによるプロテオーム変動をDIA-MSで解析したところ、約100種類のタンパク質が急速に減少することを見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、網羅的なタンパク質寿命計測のためにDIA-MS法を導入し、約9,000種類のタンパク質の量的変動を簡便に測定することが可能となった。また、質量分析サンプル調製についてSP3法を導入し半自動化することで、多検体試料のMS測定も可能にした。確立した網羅的タンパク質寿命計測法を用いて、シャトル分子のノックダウン時やストレス応答時のプロテオーム変動も確認した。一方、様々な領域内共同研究も開始し、これはタンパク質寿命領域に貢献することが期待できる。また、シャトル分子RAD23A/Bについてオーキシンデグロン誘導細胞株を作製し、迅速なプロテインノックダウンが可能となったため、次年度以降の研究に用いる。このように、研究は当初の計画通りに順調に進展している。

今後の研究の推進方策

(計画1)シャトル分子群によるタンパク質寿命制御:作出済みのRAD23A/Bオーキシンデグロン誘導細胞およびUBQLNファミリーKD細胞を用いて、CHX-DIA-MS法によりプロテオームワイドのタンパク質寿命解析を実施し、情報学と組み合わせることで、基質選択性が如何に生じているか解析する。
(計画2)液-液相分離によるプロテアソーム分解制御機構:高浸透圧ストレスやATPストレス刺激時にDIA-MS法を用いた高深度比較プロテオーム解析を実施し、大規模なプロテオームリモデリングが生じることを見出しているが、どのようなタンパク質グループがこれらのストレスによって分解誘導されるかについて解析する。また、ユビキチンリガーゼのノックダウンライブラリーを用いて、共通のユビキチンリガーゼで分解誘導されるか、基質タンパク質側に共通項が存在するかについても検討し、高浸透圧ストレスおよびATPストレスの文脈依存的デグロンを探索する。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 6件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] USP8 prevents aberrant NF-κB and Nrf2 activation by counteracting ubiquitin signals from endosomes2024

    • 著者名/発表者名
      Endo Akinori、Fukushima Toshiaki、Takahashi Chikage、Tsuchiya Hikaru、Ohtake Fumiaki、Ono Sayaka、Ly Tony、Yoshida Yukiko、Tanaka Keiji、Saeki Yasushi、Komada Masayuki
    • 雑誌名

      Journal of Cell Biology

      巻: 223 ページ: e202306013

    • DOI

      10.1083/jcb.202306013

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Senescent cells form nuclear foci that contain the 26S proteasome2023

    • 著者名/発表者名
      Iriki Tomohiro、Iio Hiroaki、Yasuda Shu、Masuta Shun、Kato Masakazu、Kosako Hidetaka、Hirayama Shoshiro、Endo Akinori、Ohtake Fumiaki、Kamiya Mako、Urano Yasuteru、Saeki Yasushi、Hamazaki Jun、Murata Shigeo
    • 雑誌名

      Cell Reports

      巻: 42 ページ: 112880~112880

    • DOI

      10.1016/j.celrep.2023.112880

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] ユビキチンプロテオミクスによるPROTAC評価2024

    • 著者名/発表者名
      佐伯 泰
    • 学会等名
      京都大学オープンイノベーション機構ミニシンポジウム「創薬プロテオミクス 企業とアカデミアの視点から」
    • 招待講演
  • [学会発表] ユビキチン創薬の最新動向とLLPS創薬の可能性2023

    • 著者名/発表者名
      佐伯 泰
    • 学会等名
      千里ライフサイエンスセミナーV1「相分離がもたらす医療・創薬の新展開」
    • 招待講演
  • [学会発表] プロテアソームによるタンパク質寿命決定の仕組み2023

    • 著者名/発表者名
      佐伯 泰
    • 学会等名
      学術変革領域(A)「タンパク質寿命が制御するシン・バイオロジー」キックオフシンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] プロテアソームによるタンパク質寿命決定の仕組み2023

    • 著者名/発表者名
      佐伯 泰
    • 学会等名
      第96回日本生化学会大会シンポジウム「タンパク質寿命学の創出」
    • 招待講演
  • [学会発表] プロテアソームによるタンパク質分解と液滴形成2023

    • 著者名/発表者名
      佐伯 泰
    • 学会等名
      第40回バイオメディシナルケミストリーシンポジウム「タンパク質分解」
    • 招待講演
  • [学会発表] ストレスに応答したプロテアソーム凝縮体形成2023

    • 著者名/発表者名
      佐伯 泰
    • 学会等名
      第46回日本分子生物学会年会シンポジウム「生体分子凝縮体を介するストレスへの適応機構」
    • 招待講演
  • [図書] 実験医学別冊『決定版 質量分析活用スタンダード』2023

    • 著者名/発表者名
      佐伯 泰、土屋 光、遠藤彬則、冨田拓哉
    • 総ページ数
      11
    • 出版者
      羊土社
    • ISBN
      978-4-7581-2264-1
  • [備考] 東京大学医科学研究所タンパク質代謝制御分野ホームページ

    • URL

      https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/prometa/

URL: 

公開日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi