古代の主食糧としてのコムギ栽培進化プロセスの解明

2012 年度 実績報告書

• 研究領域: 現代文明の基層としての古代西アジア文明―文明の衝突論を克服するために―
• 研究課題/領域番号: 24101003
• 研究機関: 山口大学
• 研究代表者: 丹野 研一 山口大学, 農学部, 助教 (10419864)
• 研究分担者: 河原 太八 京都大学, 農学研究科, 准教授 (20115827)
• 研究期間 (年度): 2012-06-28 – 2017-03-31
• キーワード: 西アジア / 考古学 / 分子進化 / コムギ

研究概要

本研究では、人類繁栄の引き金となった古代の食糧生産加工に関する情報を収集したい。エンマーコムギおよびアインコルンコムギはオオムギと並び、世界最古の農耕文明である西アジア文明を支える主食糧だった。しかしエンマーコムギおよびアインコルンコムギについては、現代に栽培生産されるパンコムギやマカロニコムギとは異なり絶滅が危惧されているいわゆる古代コムギであるため、これまで得られている栽培特性や遺伝などの作物としての基本情報はごく限られている。本研究では遺跡から出土するこれらムギを中心とした主食糧に関する考古植物学的な詳細な同定研究を進める。それとともに、近年のゲノム科学技術の進展をこれら古代麦に適用することで、分子進化学的な立場からも考古学の新解釈を助けるデータを収集する研究を行う。これら古代麦に関するデータ集積により、また領域研究間のディスカッションを経ることで、古代の食糧に関連する理解を深めることを研究の目的とする。
本年度は研究初年度であり、前期は研究体制の整備を若干行うとともに、イランの考古遺跡発掘において植物遺存体のサンプリングを行った。年度後期は研究代表者が育児休業をとるため植物材料の育成・増殖をのぞいては研究中断とし、次年度開始とともに再開する予定である。実質3カ月間という研究期間ではあったが目ぼしい成果として、これまで報告例の少ないイラン南部における旧石器時代後期の食糧に関して貴重な情報が得られている。

現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

交付決定された7月から9月までの3か月間は当初計画以上に研究が進展したが、年度の後半10月より3月まで研究代表者が育児休業を取得することとなり、半年間研究を中断する運びとなった。この育児休業による研究中断により、本年度の研究進捗には遅れが出た。

今後の研究の推進方策

前述のように研究代表者の育児休業取得のために計画全体に遅れが生じているが、研究自体に問題が生じているわけではなく、次年度からは円滑に研究が進むと期待される。この遅れをできるかぎり取り戻すために、次年度には備品等の整備を早々に進めるなど無駄な時間を極力省く努力をする必要があるだろう。すでに国内のコムギゲノム研究グループと情報交換の約束をとりつけたこともあり、ある程度の遅れは1、2年でカバーできるかと見積もる。