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2016 年度 実績報告書

古代の主食糧としてのコムギ栽培進化プロセスの解明

計画研究

研究領域現代文明の基層としての古代西アジア文明―文明の衝突論を克服するために―
研究課題/領域番号 24101003
研究機関山口大学

研究代表者

丹野 研一  山口大学, 大学院創成科学研究科, 助教 (10419864)

研究分担者 山根 京子  岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (00405359)
矢野 健太郎  明治大学, 農学部, 専任教授 (00446543)
研究期間 (年度) 2012-06-28 – 2018-03-31
キーワード考古植物 / 品種育成
研究実績の概要

H28年度の遺跡出土植物同定に研究成果に関しては、ハサンケイフ遺跡(トルコ東部、11,000年前頃、新石器時代PPNA期)およびハッジ・エラムハンル遺跡とギョイテペ遺跡(ともにアゼルバイジャンの新石器時代)の出土植物を取りまとめ、国際民族考古植物学会 (第17回大会、パリ、フランス)にて発表した。トルコ東部は農耕起源の候補地としてはふさわしくないことを明らかにした。またアゼルバイジャンが西アジア農耕が直接流出した地であることを、当地の現在知られる最古の2農耕遺跡の出土植物から明示した。領域横断研究として、西アジアで出土する鎌刃石器と穀類の相関関係をはじめて網羅的大量データから示して論文発表した。上述ハサンケイフ遺跡については、現地のトルコでの成果発信も情報誌を通じて行った。
分子遺伝学研究では、前年度までに行った西アジア出土の炭化種子からのDNA複製に関する追試を行った。一度目の追試では、DNA抽出条件を変えて抽出効率を高める計画であったが、期待とは逆に検出限界を下回った。このため次世代シーケンス分析を急遽中止し、年次を繰り越す措置を取った。H29年度に再試験を行い、今度は、依然として微量ではあるが目的物といえる増幅を確認できた。
古代小麦を交配親に用いた早生デュラムコムギの育成に成功し、2017年3月に池袋サンシャインシティ文化会館においてプレスリリースを行った。デュラムコムギはスパゲティなどパスタ用の小麦であり、これまで国内品種は国試験場が育成した中晩性1品種しかない。これまでデュラムコムギは50年間ほど栽培検討がなされてきたが、収穫期が梅雨になり赤カビ病と穂発芽という壊滅被害のリスクが避けられず、早生系統の育成が望まれてきた。これを本研究で成功させたので、国産スパゲッティの本格増産に貢献できるだろう。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

梅雨の影響を受けにくい「早生」のデュラムコムギの作出については、当初の期待以上の大きな成果が出ている。この仕事は農作業がたいへんに重労働になり、また数百系統を適切に区別しながら栽培・収穫・整理するため、成果が上がるにつれ作業時間が増すという事態になっている。このことから他の計画研究を圧迫することになり、とくに顕微鏡同定というもう一つの時間のかかる作業時間が減少している。これらのことから「おおむね順調」という自己評価にしている。

今後の研究の推進方策

早生のデュラムコムギの作出について、より力を入れてゆくことになる。本成果は当初計画を大きく上回るものであり、国産スパゲッティのための基盤研究である産業貢献を考えると、考古植物同定という同様に大変な時間のかかる研究作業が抑制されるという対処はやむをえず、妥当であると私は考える。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Relationship between spike morphology and habitat of four Aegilops species of section Sitopsis2017

    • 著者名/発表者名
      20)Ohta, A., Yamane, K., Kawahara, T.
    • 雑誌名

      Genetic Resource and Crop Evolution

      巻: 64 ページ: 889-899

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Narrowing the harvest: Increasing sickle investment and the rise of domesticated cereal agriculture in the Fertile Crescent2016

    • 著者名/発表者名
      Maeda O., Lucus L., Silva F., Tanno K., Fuller D.Q.
    • 雑誌名

      Quaternary Science Reviews

      巻: 145 ページ: 226-237

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Yerlesik bir Hasankeyf koyde avci toplayci yasam2016

    • 著者名/発表者名
      Maeda O., Hongo H. and Tanno K.
    • 雑誌名

      Actuel Arkeoloji

      巻: 53 ページ: 40-47

  • [学会発表] Plant remains from Hasankeyf Hoyuk: a new PPNA settlement in the upper Tigris valley2016

    • 著者名/発表者名
      Tanno, K., Maeda O., Miyake Y.
    • 学会等名
      International Work Group for Palaeoethnobotany
    • 国際学会
  • [学会発表] The food-producing economy in earliest Shomutepe-Shulaveri culture, western Azerbaijan2016

    • 著者名/発表者名
      Akashi C., Nishiaki Y., Guiliev F. and Tanno K.
    • 学会等名
      International Work Group for Palaeoethnobotany
    • 国際学会
  • [学会発表] デュラムコムギの国内生産に向けた栽培条件の検討2016

    • 著者名/発表者名
      丹野研一,坂和七月,鎌田英一郎,荒木英樹,高橋肇
    • 学会等名
      日本作物学会中国支部会
  • [学会発表] マルチプレックス PCR 法を用いた AABB および AAGG ゲノムをもつ四倍性コムギの同定2016

    • 著者名/発表者名
      赤堀江梨, 丹野研一, 竹内綾香, 小林恵子, 河原太八, 山根京子
    • 学会等名
      日本育種学会中部地区談話会
  • [図書] The origins of agriculture (In:Ancient West Asian civilization: Geoenvironment and society in the pre-Islamic Middle East)2016

    • 著者名/発表者名
      Tanno, K. and Maeda, O.(eds.Tsuneki A., Yamada S. and Hisada K.)
    • 総ページ数
      12(230)
    • 出版者
      Springer
    • ISBN
      978-981-10-0553-4

URL: 

公開日: 2018-12-17  

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