研究領域 | 現代文明の基層としての古代西アジア文明―文明の衝突論を克服するために― |
研究課題/領域番号 |
24101005
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
久田 健一郎 筑波大学, 生命環境系, 教授 (50156585)
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研究分担者 |
荒井 章司 金沢大学, 自然システム学系, 教授 (20107684)
鎌田 祥仁 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (30294622)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | 珪質岩 / チャート / オフィオライト / 放散虫 / 石器 |
研究実績の概要 |
平成24年度の研究の目的をイラン考古学研究所所蔵のアルセンジャン地区から得られた石器の岩相を検討するとともに、アルセンジャン地区の地質調査を実施し、石器に向いた石材の原産地を突き止め、石器石材の入手経路・手段を検討するものとした。そして研究実施計画として、野外調査と室内分析を計画した。南イランのアルセンジャン地区は京都大学の考古学チームによる予察的な洞窟遺跡分布が報告(Ikeda, 1979)されており、石器の編年も現在慎重に進められている。予定されている調査地域には、ネリーズオフィオライトの一部が分布し、また放散虫を含むカオティックな岩石の分布も知られている。 平成24年度の調査では、2回の渡航で中期旧石器時代の石器と同質の岩石露頭を探し出すことに成功した。A5-3と呼ばれる石灰洞窟から豊富に産出する石器の一部と全く色、硬さなどが一致する放散虫岩が、ダルネシン渓谷の中流域の小丘で露出する。この地点は洞窟から4km離れており、古代人の生活圏内にあったものと推定される。このような石材探査の他に、ダルネシン渓谷の地質図作成を試みた結果、ほぼ完全な地質図を作成することができた。これにより、今後石材の供給と成り得る放散虫岩の層序学的検討が進められるものと思われる。また、2回の渡航で、ネリーズオフィオライトの超マフィック岩や、放散虫岩の系統的採集も実施した。現在、これらの岩石資料の室内作業を進めているが、まだ結果を示すには至っていない。これらの岩石学的検討や微化石の抽出・鑑定が進めば、地質図とあわせて、精度の高いネリーズオフィオライトの地質学的意義が解明され、同時に、古代人の石器石材の広域的な入手経路などが具体的になるものと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ビザ取得がなかなか難しい状況にあって、2回の渡航ができた。これにより、岩石試料の採取が実行できたので。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、「石器石材としての放散虫岩の有効性」の検討を進めたい。従来フリントとして一括されていた石材が、実は放散虫岩であることが明らかとなった。今後は、アルサンジャン地区からさらに地域を拡大して、石器の材質を検討しつつ、古代人の石材の入手経路・範囲などの検討を進めたい。また放散虫岩がオフィオライトと密接な産出が予想されることから、周辺国のオフィオライト(オマーンやキプロスなど)の地質情報を収集し、石器―石材(放散虫岩)―オフィオライトの石器地質学の考察を進めたい。
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