計画研究
27年度は以下のような実施計画を設定した(室内調査と野外調査)。室内調査では前年度現地から採集した試料(南イラン・アルサンジャン地域の放散虫岩)について、放散虫岩のシリカ含有量などを検討する作業と放散虫化石を抽出し堆積年代を決定する作業を予定した。しかしながら、蛍光X線分析器の調整不良のためシリカ含有量の測定ができず、また放散虫岩中に含まれる有孔虫同定が極めて重要なことから、偏光顕微鏡による岩石薄片の観察を実施した。その結果、50枚の岩石薄片の一部から、有孔虫を見出し、現在同定作業中である。このほか予定されていた書籍の原稿執筆を行い、「西アジア文明学への招待」(悠書館、筑波大学西アジア文明研究センター編、283ページ)の第I部文明の舞台西アジア第III章西アジアの大地形と地質を担当した。野外調査では、イラン国内のケルマンシャー地域の調査とオマーンのオフィオライト調査を計画していたが、イラン調査受け入れ機関であるイラン地質調査所からの要請で、南イランザグロス山脈のネリーズオフィオライトの地質調査(26年8月)に従事し、オフィオライト・オブダクションに関する新知見が得られた。またこの調査結果に関連して、イラン地質調査所パリサ・ゴラーミ研究員を筑波大学に招聘(27年1月~2月、50日間)し、南イランザグロス山脈ネリーズオフィオライトの構造発達史の総括作業を行った。このほか、26年6月28日・29日「西アジア文明学の創出1:今なぜ古代西アジア文明なのか?」(会場サンシャイン文化会館)の一般市民向けシンポジウムを開催し、イラン地質調査所セイード・アガナバティ顧問を招聘し、「セッション01:地質が文明を創ったのか?」の世話人を務めた。さらにアウトリーチとして、NHK体感!グレートネイチャー(26年12月放映)「潜入イラン 炎と緑の大地」の監修を行った。
2: おおむね順調に進展している
26年度は本新学術領域研究の中間評価の該当年であり、全体的には「A-」の評価を得た(26年10月)。これを受け、本計画研究においても、若干の計画変更を行った。すなわち、イランのみならず西アジアの全般的地質に関する包括的な取りまとめ作業である。そこでイラン地質調査所セイード・アガナバティ顧問の協力を得て、彼の著書「イランおよび周辺国の地質」のペルシャ語から英語への翻訳作業に取り掛かった。この翻訳作業は26年度の追加予算で認められたものであり、著書のおよそ半分が終了した。本計画研究の達成度は概ね良好で、イラン・ケルマンシャー地域の地質調査を除いてザグロス山脈の石器に関する地質についての情報が蓄積されている。
本新学術領域研究は28年度をもって終了する。したがって本年度は、それを見越した取りまとめ作業に入る必要性がある。既述のように、本計画研究の目的は、旧石器時代の石器の供給源に関する研究であるので、今後はイランの石器に関する情報を収集し、それに対応したイランの地質状況の把握(イラン・ケルマンシャー地域)とそれに並行した西アジアの地質総括(文献調査による)を推進していく。
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