研究領域 | 現代文明の基層としての古代西アジア文明―文明の衝突論を克服するために― |
研究課題/領域番号 |
24101005
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
久田 健一郎 筑波大学, 生命環境系, 教授 (50156585)
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研究分担者 |
鎌田 祥仁 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (30294622)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | 放散虫岩 / 石器 / フリント / オフィオライト / ザグロス / 砕屑性クロムスピネル |
研究実績の概要 |
久田はフリントと呼ばれてきた石器の素材の一部が、イランの場合、放散虫岩であることを明らかにしてきた。特に南イラン、ザグロスのアルサンジャン周辺には白亜紀前期の放散虫岩の広域分布が認められることを指摘した。またこの放散虫岩はオフィオライトと呼ばれるかつての海洋地殻の断片と密接な関係で産出することが知られている。ザグロスにはネイリーズとケルマンシャーの2大オフィオライトが有名である(アルサンジャンはネイリーズ・オフィオライトに属する)。今年度はケルマンシャー・オフィオライトの概査を行った結果、ネイリーズよりもさらに広域的に放散虫岩が分布すること、しかしながら、居住地となる石灰岩地帯とかなり離れることを確認した(数十キロの距離)。いずれにせよ、ザグロスは放散虫岩の宝庫であり、しかもザグロスを縦断する方向で放散虫岩が点在することが確認された。またこの放散虫岩地帯は、その堅固な性質にもかかわらず数センチから数十センチに破断して地表に散在することが多く、いわゆるローリングヒルズを形成している。この地形は、歩行移動を容易にさせ、物質運搬を容易にさせたであろう。したがって、ザグロスにはその伸張方向に、放散虫岩回廊があって、比較的容易に移動が行われていた可能性がある。 上記で述べたように、放散虫岩のザグロスの縦断的広域的点在分布は、オフィオライトの形成史と密接に関わっている。この形成史をイラン地質調査所の若手研究者、Parisa Golami女史との共同研究(白亜紀から中新世にかけての砕屑性クロムスピネルに基づく研究)で実施した。その結果、始新世を境にして島弧的スピネルから海洋底的スピネルに変化したことを突き止めた。この発見は、オフィオライト形成プロセスに束縛条件を与えるものとして注目される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イランの調査を予定しているが、厳しい国際情勢の中でどのような変化が発生するか不透明な点も多く、「おおむね」と判断した。その場合は、近隣のウズベキスタンなどの調査も考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も最終年度ということで、まとめの作業に入る。 1)ペルシャ語で書かれた西アジアの地質の翻訳本の完成(主に編集作業)2)ケルマンシャー・オフィオライトの調査(現地調査)3)イラン・オフィオライト研究者の招聘4)国際会議において成果発表(IGCP589,ミャンマー開催)5)放散虫岩の堆積岩石学的研究の論文化6)成果発表として一般書籍の執筆
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