研究領域 | 現代文明の基層としての古代西アジア文明―文明の衝突論を克服するために― |
研究課題/領域番号 |
24101006
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研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
本郷 一美 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 准教授 (20303919)
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研究分担者 |
姉崎 智子 群馬県立自然史博物館, その他部局等, 研究員 (50379012)
藤井 純夫 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (90238527)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | 動物遺存体 / 家畜化 / 南東トルコ / 新石器時代 / 初期定住村落 |
研究実績の概要 |
京都大学において開かれた「家畜化と乳利用」シンポジウム(5月)を共催し、本研究により得られたウシ科偶蹄類(ヒツジ、ヤギ、ウシ)の家畜化の時期と過程および乳利用の開始についての議論を深めた。 2015年8月に予定されていたハッサンケイフ・ホユックの発掘調査がトルコ南東部の治安状況悪化により中止となったため、この遺跡からの新たな資料を得ることができなかったが、26年の調査で収集した出土動物骨資料の分析を進めた。2016年3月には、アンカラのハジェテペ大学で、トルコの共同研究者との討議を行なった。次年度に予算の一部を繰り越し,2016年5月にトルコに渡航し遺跡調査の現状などについて情報収集を行なった。 トルコ南東部の土器新石器時代初期のスマキ遺跡から出土した動物骨を全て日本に送付し、分析を開始した。この遺跡は、紀元前8千年紀のティグリス川上流域から東方への家畜の伝播を示す最初期の遺跡であり、家畜化の開始から農耕と牧畜に基盤を置く西アジア型社会へ至る変化の過程を追うための重要な出土資料である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2015年度は、ティグリス川上流の家畜化以前の初期定住集落(紀元前9500年ごろ)であるハッサンケイフ・ホユックの現地調査はできなかったものの、同じ地域に家畜が導入された直後の集落とみなされるスマキ遺跡(紀元前7000-6000年頃)の資料をすべて日本へ送付することができた。この資料の分析を進め、すでに収集したハッサンケイフ、チャヨニュのデータと共に、約4000年間にわたる期間の、狩猟採集→家畜飼育の開始→牧畜社会の成立という過程の変化を詳細に追うことができると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
ティグリス川、ユーフラテス川上流域の紀元前10000年~6000年の遺跡から出土した動物骨の分析結果を比較するとともに、すでに報告されている同地域の他の遺跡のデータも統合する。ティグリス川上流域のハッサンケイフ・ホユック、チャヨニュ、サラット・ジャーミー・ヤヌ、スマキのから出土した動物遺存体の1次データの多くは収集済みだが、ハッサンケイフ・ホユックとスマキの出土資料の収集を継続する。「肥沃な三日月弧」北部における動物利用の通時的変化とともに、家畜化過程の地域的な違い、家畜化が進行した地域から周辺への伝播の時期などを明らかにする。さらに、東方(ザグロス山麓地域)、西方(中央アナトリア)、南方(レバント)への家畜の伝播過程について、海外の研究協力者とデータ交換をしつつ俯瞰する。
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