研究領域 | 現代文明の基層としての古代西アジア文明―文明の衝突論を克服するために― |
研究課題/領域番号 |
24101008
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
池田 潤 筑波大学, 人文社会系, 教授 (60288850)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | エマル / 言語 / 文字 / アッシリア学 |
研究実績の概要 |
米国ニューヨーク大学から1名の研究協力者を招聘する予定であったが、諸般の事情によりこれを延期し、代わりにD. Owen(コーネル大学名誉教授)を本学に招いて Contributions to Assyriology in a Time of Turmoil: The CUSAS Publication Project(争乱の時代におけるアッシリア学:CUSAS出版プロジェクトの貢献)と題する講演会を実施した。シリアの内戦により、本計画研究班においても一次資料の調査ができない状況であるが、そのような状況下でいかにアッシリア学の研究を続けていくかに関して、コーネル大学の取り組みから多くを学ぶことができた。 日本オリエント学会の第308回公開講演会として、新学術領域研究の研究課題を基に「アッカド文字と日本文字における訓について」と題する一般向けの講演を行った。古事記や万葉集の時代から日本語を書き表すためには漢字を使っているが、漢字のもつ意味と音を区別し、音だけを表す文字として利用したり、さらに音読みだけでなく訓読みを併用するなど、より正確に日本語を表記する努力がされてきた。古代メソポタミアの世界では今から五千年以上前にシュメル語を書き表すために楔形文字が成立し、その後シュメル語とは系統を異にするアッカド語はこの楔形文字を採用することになり、その過程で訓読みのシステムを生みだした。本講演では、古代オリエントの文字文化に対する一般の人々の理解と関心を高めるアウトリーチとして、日本語の事例と対照しながら古代メソポタミアの文字利用にみられる訓のシステムについて紹介した。これは、本領域が掲げる「人類のグローバルな言語活動を明らかにする」「西アジア文明の研究を通して現代文明を見つめ直す」という問題意識に本計画研究班から答える試みでもある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シリアの内戦により、本計画研究班においても一次資料の調査ができない状況であるが、中間評価でもアッカド語の性格探求や文章解釈、エマル王朝の複数性、エマルの書記伝統の編年については、かなりの成果が上がっているとの評価を受けることができた。 昨年度は、中間評価で課題とされた言語のもつ「先進性と普遍性」「人類のグローバルな言語活動を明らかにする」「西アジア文明の研究を通して現代文明を見つめ直す」という観点についても一定の進展が見られたことから、おおむね順調な進捗と自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、国際ワークショップの開催により周辺アッカド語文書に見る古代西アジアの歴史・宗教に関する総括を行った上で、「人類のグローバルな言語活動を明らかにする」という課題により一般言語学的な観点からアプローチする道筋を整えたい。
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