研究領域 | 現代文明の基層としての古代西アジア文明―文明の衝突論を克服するために― |
研究課題/領域番号 |
24101008
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
池田 潤 筑波大学, 人文社会系, 教授 (60288850)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | 楔形文字 / エマル / 言語 / 歴史 / 宗教 |
研究実績の概要 |
昨年度に招聘する予定だった研究者を筑波大学に招き、計画研究6、計画研究8と合同で2016年3月に "Cultures and Societies in the Middle Euphrates and Habur Areas in the Second Millennium BC: Calendars and Festivals" と題する国際会議を開催した。その中で、連携研究者の山田雅道氏と米国ニューヨーク大学のD. Flemingによるエマル市の暦に関する研究発表を手掛かりとして、エマル市の政治史の根本問題と宗教の根本問題について議論を行った。 後期青銅器時代のシリアにおいて、エマル市の人々は毎年第1月15-21日にズクル儀礼を、そして「第7年」には同一日程で特別なズクル祭を開催していたことが知られている。山田雅道氏は最近の研究において、祭のための諸予備儀礼の日程に関する考察に基づき、この祭が(7年ではなく)6年周期で実施されていたと論じている。彼の考えでは、この周期は3年に1度の閏月挿入を反映し、祭開催後最初の予備儀礼(第7年第1月25日)が行われる年を第1年と数える。今年度の山田氏の研究発表においては、第1月15-16日に行われる農耕(播種)儀礼に関する考察を通して、このズクル周期仮説の検討を行った。 D. Flemingは新・旧2種類の暦の存在によってこれを説明する。しかし、そもそもエカルテ文書に「第二王朝」の王家の印章が押印されている事実(当時「第二王朝」が既に存在していたことを示す)は彼らの二つの王朝説と衝突するため、年代学的枠組みの理解自体に問題あることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シリアの治安が改善しないため、一次資料の調査ができない状況が続いているが、本研究の根本問題を扱う国際会議が開催され、根本問題のうち2つに対して、新たな知見が得られている。また、3つの計画研究班が連携して国際会議を開催した結果、海外からの研究者9名を交えた大規模でレベルの高い研究交流が実現した意義は大きいと自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
3つの根本問題のうち2つに対しては一定の成果が上がっているが、「(1)周辺アッカド語が言語ではなくalloglottography であるというEva von Dassow の学説の妥当性を検証し、周辺アッカド語の本質を解明する」という問題が残されている。中間評価で「言語のもつ『先進性と普遍性』という観点や文明論としてどこまで意味をもつのか。例えば、アッカド語は言語の原型といえるような性格をもつといえるのだろうか。」「また、この研究の先には、『人類のグローバルな言語活動を明らかにする』『西アジア文明の研究を通して現代文明を見つめ直す』と研究課題の設定に書かれている。こうした課題をどのように行うのかを明らかにしながら研究を進めてほしい。」という指摘を受けているので、これを念頭に置きつつ、今年度は言語の根本問題に迫りたい。 その上で、新学術領域全体の総括シンポジウムで5年間の成果をまとめ、残された課題を明らかにしたい。
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