研究領域 | 現代文明の基層としての古代西アジア文明―文明の衝突論を克服するために― |
研究課題/領域番号 |
24101009
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
柴田 大輔 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (40553293)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | 宗教政策 / 政治的神学 / 政教一致 / 政教分離 / 西アジア / メソポタミア / エジプト / イスラーム |
研究実績の概要 |
本計画研究は、「宗教」・「政治」概念の歴史性に関する近年の研究を総括したうえで、これら概念を分析のためのコンセプトとしてどのように活用できるか検討する。このうえで、最も資料が豊富な前二千年紀後半から前一千年紀中葉にかけてのメソポタミアに重点を置きつつ、古代西アジア・北東アフリカにおける領域国家の領土統治と「宗教」的領域の関係を明らかにする。特に、国家運営の一環として形成された政治的神学、そして、効果的な領土統治を目指す戦略における「宗教」的領域の具体的な様相を明確にする。そのうえで、続くユダヤ・キリスト教やイスラームの伝統と比較することにより、西アジア・北東アフリカ宗教史全体の中に古代の状況を位置づけるとともに、現代に続く西アジア・北東アフリカの「政治」と「宗教」を巡る問題の理解に転回をもたらすことを目指す。このような研究は、ワークショップ・シンポジウム形式で進められる共同研究を中心に進められる。 本年度はこのような研究計画を推進するための準備に重点を置いた。まず、研究代表者が夏期に長期間ハイデルベルク大学に出張した。欧米の研究協力者と研究打ち合わせを行い、また同大学の専門図書館を利用することによって準備を進めた。ドイツ滞在中には、準備だけではなく具体的な研究課題にも着手した。このようにして得た成果を基にしつつ、若手研究者を中心とする国内の研究者と打ち合わせを重ね、今後の具体的な方針を定めた。2月には第一回目の研究会を開催し、代表者が問題提起形の研究発表を行った。参加者から建設的な批判を受けることにより、問題の所在を明確化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ドイツ長期出張ならびに帰国後の研究打ち合わせなどを通じ、国内外における様々な分野の専門家の協力を得ることが出来た。特に、申請時に問題点として指摘された隣接する地域・時代、就中イスラーム研究者と近現代ヨーロッパ研究者の協力を得られる体制をつくることができた。このため、後述する通り、古代の研究に重点を置きつつも、近現代の問題を含むマクロな視点から今後研究を行うことが出来るようになった。 また、連携研究者や研究協力者を中心に古代西アジア研究に取り組む様々な分野の若手研究者ネットワークを構築することが出来た。これまで古代西アジア研究は各分野ごとに分断された状況にあった。本計画研究の遂行には分野を超えた連携が必須であり、このような若手研究者ネットワーク構築によってより実り多い成果を期待できる状況になった。
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今後の研究の推進方策 |
本計画研究は審査時に中世以降、特に近現代研究に対する寄与に関して建設的な批判を受けた。本計画研究ではこのような課題を本計画研究以後に取り組むべき将来の課題としていたが、批判を真摯に受け止め、研究計画準備の過程において研究体制の改変を目指した。そして、上述の通り幸いにして他地域研究の専門家やイスラーム研究者グループの助言を受けられる体制を作ることに成功した。このため、本計画研究では、今後、古代の研究に取り組みつつも、常に中世・近現代の問題意識を反影させ、イスラーム研究者をはじめとする様々な研究分野の専門家と協働して研究を進める。
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