研究領域 | 現代文明の基層としての古代西アジア文明―文明の衝突論を克服するために― |
研究課題/領域番号 |
24101010
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
丸岡 照幸 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (80400646)
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研究分担者 |
池端 慶 筑波大学, 生命環境系, 助教 (70622017)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | 安定同位体 / 質量分析 / 古環境解析 / 環境変動 / 多元素同時分析 |
研究実績の概要 |
本研究では下記の研究を行った。 [1] リン酸-酸素同位体比分析装置の開発:リン酸イオンの酸素同位体比測定のために必要となるタンタル炉をH25年度に導入した。炉心管はタングステンであり、その周りを2000℃程度まで加熱する。タングステンは高融点の材質であるが、酸素雰囲気下での加熱では酸化されるために、真空容器内に炉心管を設置する必要がある。しかし、高温から冷却する時に炉心管接続部分で真空漏れが生じることがわかり、その対応が必要となった。同様の装置ではこれまでこのような真空漏れは生じていなかった。炉心管の堆積を小さくすることにより、発生した(測定に必要な)ガスの広がりを抑えることができると考え、炉心管を通常よりも短くすることにしていた。しかし、このことが問題であったと考え、炉心管を通常の長さに戻すことにした。これに伴って部品の交換などを行い、真空試験を行ったところ、2000℃での漏れはなくなり、実験が可能になった。酸素分析では固体物質に含まれる酸素をCOに変換することで同位体比分析が可能になる。市販装置の炉での1300℃までの加熱では、リン酸銀の酸素をすべてCOに変換することはできていなかった。10%以上の残存物質が炉の中に残っていた。この残存物質が後の測定に影響を与えたが、この新規導入したシステムでは、1600℃以上で100%の酸素の変換が可能になった。この間に得たデータを基に日本質量分析学会・同位体比部会研究集会で研究発表を行った。 [2]低濃度硫黄試料の同位体比分析:硫黄は反応性が高いガスであり、低濃度になるほどその影響が如実に表れる。特に、発生したガスの分離に使うガスクロマトグラフィーカラムの設定に大きく依存することが分かってきた。この手法を用いて岩石試料の同位体比分析を進めた。骨コラーゲンにおいても扱える硫黄量は少ないので、このような手法の確立は不可欠である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
リン酸酸素分析用に導入した高温炉の改良に時間を多くの費やすことになった。炉心管を実績のある長さに戻すことで対処できたが、高温での真空を保つために精密な加工が必要となるため、その部品の加工には時間がかかった。しかし、この方策により2000℃までの加熱が可能になり、基礎的なデータをそろえることができた。一方で、通常の長さに戻したことによる感度の低下は免れることはできないので、より体積を減らした分析(高感度分析)ができるように検討が必要である。考古資料をできるだけ破壊せずに分析するためには、より少ない量での分析が必要不可欠である。また、このような検討は、酸素以外の同位体比分析にも共通していることであり、無駄にはならない。
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今後の研究の推進方策 |
リン酸酸素同位体比分析を確立するために、さらに基礎データをとる必要がある。また、リン酸の酸素同位体比分析には1600℃で十分であることが分かったが、さらに高温を用いることでケイ酸塩鉱物のようなこれまで扱いにくかった物質の酸素同位体比分析も可能になるかもしれない。リン酸酸素測定のための炉の調整を進めるとともに、他の極微量同位体比分析のための試料調整方法の確立を進める。さらに、火山活動、隕石衝突など人類の活動に関わる環境変動要因に関して、それらを適切に読み取る方法論を確立する。
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