研究領域 | 現代文明の基層としての古代西アジア文明―文明の衝突論を克服するために― |
研究課題/領域番号 |
24101011
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
安間 了 筑波大学, 生命環境系, 講師 (70311595)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | 古環境 / 環境動態 / 湖沼堆積物 / 第四紀年代測定法 / 風化 |
研究概要 |
平成25年度は、設備備品費を使用して既存のSEMをアップグレードした上でCLを導入し、堆積物中の膠着物質を観察できる環境を整えた。また堆積物柱状試料を採取するための携帯式の掘削機を導入した。 7月16日から8月12日にトルコ共和国に赴き、海外連携研究者のDilek氏および院生の安冨氏らと1) 古環境変動解明を目的としたGediz盆地での湖沼堆積物の採取、2) 石器石材供給源の特定のためのマッピング、3) 世界遺産カッパドキアの景観を形成する凝灰岩類の層序と浸食地形との関係解明を目的とした調査を行い、アンカラ大学やMTAとの現地協力体制を整えた。詳報は,新学術領域研究ニュースレター第3号に掲載した。11月1日から14日にはイラン・イスラム共和国において発掘サイトでテフロクロノロジーを適用する可能性を探るために、東大地震研究所の折橋博士とともにタブリーズ近郊にあるSahand火山の調査をおこなった。この間にクルディスタン大学、テヘラン大学、イラン地質調査所の現地研究者と交流しながら研究協力体制を構築・強化した。2月20日から3月1日にかけては大阪学院大学の研究協力者とともにイラク国に出張し、メソポタミアの粘土板や河川堆積物、河川水などの試料を採取した。スレイマニヤ大学で講演を行うとともに、研究協力体制を整備した。イランおよびトルコで環境動態を調べるため、雨水の定点採取を開始した。 4月にウィーンで開催された欧州地球科学連合においてセッションを招集し、研究発表を行うとともに西アジアの地質について取材をした。9月13日に行われた地球化学会では考古学へのジルコノロジーの応用について講演を行った。2月にはフィッショントラック研究会を招集し、研究成果を発表するとともに、第四紀年代測定法について取材した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、トルコとイランで計画的な現地調査と試料採取を行うことができた。ただし、柱状試料については用意した装置が適合しなかったため、H25年度中には予定通りに採取できなかった。それに代わって当初予定にはなかった環境動態の理解のための雨水・風成塵の定点採取をイラン・トルコ両国の3箇所ずつで開始することができた。またテヘラン大学とは二大学間交流協定の締結に向かっての道筋についても合意を得て、これに着手できた。また、当初予定にはなかったスレイマニヤ(イラク)での現地調査を行うことができ、ここでも現地研究協力体制を整えることができた。第四紀年代測定法に関する論文集をH25年度中に出版する予定であったが、これは現在も編集中である。当初予定にはなかったものの、新学術領域研究総括班メンバーで教科書の執筆を開始した。報告者はこの教科書の一章として西アジアにおける第四紀環境変動研究のレビューを行い、原稿を作成・提出した。印刷は平成26年度になる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は新学術領域総括班と共同してシンポジウム"Facilitating the Study of West Asian Civilization: what does ancient West Asia tell us?" を開催する。本研究計画では"Paleoclimatic changes and evolution of human and culture in West Asia"と題したセッションを開催する。このシンポジウムの成果はH27年度中に出版する予定である。昨年度までの調査旅行によって、オマーン国、イラン・イスラム共和国、イラク国(スレイマニヤ)、トルコ国にまたがる地域で,現地研究者による研究協力体制を構築した。今年度からはこれらの人脈をフルに活用して、研究成果を拡大していく方針である。平成26年度は7月と10月に学生とともにカッパドキア地域で凝灰岩層序のより詳しい調査をおこない、組成、透水性や間隙率を調べることによって、風化・浸食の素過程を明らかにしていく。10月にはテヘランで開催されるIGCP589 "Development of the Asian Tethyan Realm: Genesis, Process and Outcomes"に参加し、研究成果を発表する。また、ザグロス山地などでの試料採取を行う。新学術領域研究の他の研究課題と連携しながら、スレイマニヤやトルコの考古発掘サイトの近傍で古環境変遷を明らかにすべく堆積物柱状試料の採取を試みる。また、スレイマニヤ・イラン・トルコで河川堆積物とその供給源の地質体、河川水、雨水などの試料を系統的に採取し、これらの化学的な分析をとおして環境動態を把握することを目指す。
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