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2013 年度 実績報告書

西アジア古代遺跡の石器・土器の組成・微細組織データベース

計画研究

研究領域現代文明の基層としての古代西アジア文明―文明の衝突論を克服するために―
研究課題/領域番号 24101013
研究機関筑波大学

研究代表者

黒澤 正紀  筑波大学, 生命環境系, 准教授 (50272141)

研究期間 (年度) 2012-06-28 – 2017-03-31
キーワード西アジア / 土器 / 石器 / 化学分析 / SEM
研究概要

今年度は、タペ・サンギチャハマーク遺跡の土器の胎土の鉱物学的特徴を明らかにするため、遺跡最下層6層から上層1層におよぶ各時代からの土器の薄片観察およびSEM-EDS分析を行った。最下層6層から3層の土器は、化粧土が施され、表面に彩文が施された赤褐色の土器で、厚手で断面に植物茎の混和材を多量に含む。2層から最上層1層の土器は、化粧土と彩文および本体の色は同様であるが、薄手で混和材が少なかった。
薄片観察から、全ての土器の胎土には、鉱物粒子として多量の石英と、少量のアルカリ長石、白雲母、黒雲母、斜長石、微量の普通輝石、チタン鉄鉱、方解石などを含んでいた。SEM-EDSによる広いビーム面積を利用した粘土の基質部分のバルク組成の分析は、各層からの土器の破片がK, Al, Siに富むイライト質の組成を持つことを示しており、それらの組成の類似性から、一連の土器がほぼ同じ粘土素材から形成された可能性が示された。また、胎土には上述の鉱物粒子以外に、土器の焼成によって形成された焼成鉱物と高温により溶融・分解した鉱物も含まれていた。非常に明瞭に観察された焼成鉱物は透明柱状のアルカリ長石で、全ての土器の粘土の基質部分に含まれていた。この鉱物はイライト質の粘土が高温で溶融して形成される。ムライトやAlに富むスピネルは極めて微小なため、今回は観察されなかった。高温により溶融・分解した組織は、上述の鉱物粒子中の一部のアルカリ長石、斜長石、方解石、普通輝石に認められた。これらの組織から、各層からの土器は900~1000℃の温度で焼成されたと推定された。重要な点は、この焼成温度が最下層6層の土器でも実現されていことで、この遺跡では発展の初期から高度なパイロテクノロジーを有していたことが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

SEM-EDSによる土器の鉱物学的記載の方法論が整理され、実際の遺物からパイロテクノロジーに関する重要な情報が引き出せるようになったため。

今後の研究の推進方策

タペ・サンギチャハマーク遺跡だけでなく、その他の西アジアの同時代の遺跡出土の土器についても比較検討を進める予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 岩石の顕微鏡観察, SEM観察2014

    • 著者名/発表者名
      黒澤正紀
    • 雑誌名

      地球環境学マニュアル

      巻: 2 ページ: 54-55

  • [雑誌論文] Comparison of calibration curves for a new and old Si (Li) detectors2013

    • 著者名/発表者名
      Kurosawa, M., Sasa, K. and Ishii, S.
    • 雑誌名

      Annual Report of Tandem Accelerator Center, University of Tsukuba

      巻: 82 ページ: 35-37

  • [学会発表] イラン新石器時代タペ・サンギチャハマック遺跡の土器の焼成組織と焼成鉱物2013

    • 著者名/発表者名
      黒澤正紀・常木晃
    • 学会等名
      日本地球化学会
    • 発表場所
      筑波大学
    • 年月日
      20130911-20130913
  • [学会発表] 丹沢花崗岩体の流体包有物の微量元素組成

    • 著者名/発表者名
      黒澤正紀・笹公和・石井聡
    • 学会等名
      日本鉱物科学会
    • 発表場所
      筑波大学
  • [学会発表] Mineralogical study of pottery from Tappeh Sange-e Chakhmaq

    • 著者名/発表者名
      Kurosawa, M.
    • 学会等名
      The first Farming Village in Northeast Iran and Turan: Tappeh Sange-e Chakhmaq and Beyond
    • 発表場所
      Univrsity of Tsukuba
    • 招待講演
  • [学会発表] 西アジアにおける土器生産の始まりと初期の土器製作技術

    • 著者名/発表者名
      常木晃・黒澤正紀
    • 学会等名
      アジアの土と炎
    • 発表場所
      早稲田大学

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公開日: 2015-05-28  

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