計画研究
本年度も、筑波大学西アジア文明研究センターで収集された、イランの新石器時代のテペ・サンギ・チャハマック遺跡東墳丘出土の土器試料を用いて、SEM-EDSによる構成鉱物の分析を中心とした胎土分析を行った。土器に含まれる鉱物粒子は、石英・アルカリ長石・斜長石を主体に、普通輝石・頑火輝石・透輝石・方解石・黒雲母・ルチル・チタン鉄鉱・クロムスピネル・燐灰石・ジルコンなどであった。これらは日干しレンガの胎土中の構成鉱物と同じであった。これらの鉱物の溶融・分解組織も多く認められ、高温での焼成がやはり推定された。西墳丘から出土した土器についても同様の分析を進めている。土器の主成分組成の蛍光X線分析では、SEM-EDSによる胎土の広域分析の結果とほぼ同様に、全体としてカリウムが多いイライト質の組成の胎土であることが分かった。粉末X線回折では、主要鉱物として石英・アルカリ長石・斜長石が検出され、少量成分として普通輝石・頑火輝石・赤鉄鉱が、一部の土器からは方解石とイライトも検出された。これらはSEM-EDSによる構成鉱物分析の結果と一致している。一方、形成に長時間の焼成が必要なムライトやクリストバライトなどの高温鉱物は検出されなかった。このことは、短い焼成時間でも形成される鉱物の溶融・分解組織が、土器の高温焼成温度推定に有効であることを示唆している。また、シリアの新石器時代テル・エル・ケルク遺跡から出土したトルコ石風ビーズについても、断面の組織観察と組成分析を行った。その結果、見た目は美しいトルコ石色であったが、構成物は水酸アパタイトと炭酸カルシウム、酸化カルシウムなどの微粒子の焼結体となっており、全体としてアパタイト系セラミックスであることが初めて分かった。青色は少量成分として含まれるMnに起因する可能性が示唆されている。
2: おおむね順調に進展している
研究の方向性を絞り、シリアとイランの土器およびシリアのビーズの分析だけに絞ったために、最終的なデータベース作成のイメージが明確化したため。
引き続きテペ・サンギ・チャハマック遺跡西墳丘出土の土器試料の分析を進めると共に、同時代のシリア出土の土器についても分析を進める予定である。
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Ann. Rep., Tandem Accelerator Center, Univ. Tsukuba
巻: 84 ページ: 37-39
The First Village in Northeast Iran and Turan: Tappeh Sange-e Chakhmaq and Beyond
巻: 1 ページ: 19-22
西アジア文明学への招待
巻: 1 ページ: 140-154