研究領域 | 現代文明の基層としての古代西アジア文明―文明の衝突論を克服するために― |
研究課題/領域番号 |
24101013
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
黒澤 正紀 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (50272141)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | 西アジア / 古代文明 / 石器 / 土器 / 化学分析 |
研究実績の概要 |
本年度は、同時代のイランとシリアの遺跡から出土した土器について検討した。 イランのタペ・サンギ・チャハマーク(TSC)遺跡は東墳丘と西墳丘の2つからなり、東丘遺跡には、BC 5200~6300年頃の6層の遺構が確認されている。西丘遺跡はBC 6600~7200年頃の5層の遺構からなる。東遺跡は彩色土器の出土が豊富で、各層の土器の構成鉱物を粉末X線回折(XRD)により検討した。XRD測定では、多量の石英、やや多いアルカリ長石・斜長石・赤鉄鉱、少量の輝石・雲母類、稀に方解石が検出され、既に実施したSEM-EDSによる分析結果と一致した。表層の1層・2層の土器にはやや頑火輝石が目立つが、他の構成鉱物の量比の層位による変化は無かった。また、1100℃以上での焼成の指標となるムライトなど高温形成鉱物は検出されなかった。西丘遺跡には4件の土器片しかないが、XRDで測定した結果、一部試料で方解石が多い他は構成鉱物が東丘遺跡と同じであった。蛍光X線分析(XRF)による分析でも、東丘遺跡のCaがやや多い土器と同組成で、それらはSEM-EDSで決定した日干レンガの組成と一致することから、東丘・西丘遺跡の土器は現地生産の産物と推定された。 シリアのアイン・エル・ケルク遺跡はBC 5800~6600年頃の遺跡で、6層の遺構から暗色の磨研土器が出土する。TSC遺跡の土器と異なり、スサを含まず、薄手・緻密で、内部に黒芯がない。XRD測定では、多量の石英・斜長石・角閃石、やや多い普通輝石・方解石が検出された。層位による構成鉱物の量比の変化はなく、高温焼成鉱物も認められなかったが、多量の大理石岩片を含むものがあった。TSC遺跡の土器に比べ、XRFによる分析では、ややFe, Mgが多く、Kに乏しかった。大理石岩片が多いものは著しくCa濃度が高い。全体として周辺の石灰岩風化土壌の組成と調和的である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
西アジア地域では、都市が誕生して農耕が始まる重要時期の紀元前6000年紀の土器は、ユーフラテス川西岸を境に、スサまじりの厚手明色土器と薄手の暗色磨研土器に分かれており、それらを比較しながら検討を進めることで、西アジアの土器生産の特徴を把握する重要な手がかりを提供できる可能性が生じたため。
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今後の研究の推進方策 |
パイロテクノロジーの状況を検討するため、シリアの遺跡出土の土器についても土器の焼成温度の推定を行う。
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