研究領域 | 元素ブロック高分子材料の創出 |
研究課題/領域番号 |
24102002
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
菅原 義之 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50196698)
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研究分担者 |
井戸田 直和 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (60451796)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | 元素ブロック / 金属酸化物 / 表面修飾 / ナノ粒子 / ナノシート |
研究実績の概要 |
元素ブロック高分子材料のモノマーとして位置づけられる元素ブロックを、遷移金属酸化物ナノ粒子を出発物質として作製し、将来的には元素ブロック高分子へ展開するために、遷移金属の単純酸化物や複合酸化物のナノ粒子の作製とこれらを対象とした表面修飾技術を発展させるべく、研究を展開している。 液-液2層系を用いて、二酸化チタンナノ粒子の表面のリン酸エステルによる修飾を行った。リン酸エステルはモノエステル体とジエステル体の混合物として入手可能であり、すでに均一系での二酸化チタンナノ粒子のリン酸オレイルによる表面修飾による、二酸化チタンナノ粒子の元素ブロック化に成功している。本研究では、二酸化チタンナノ粒子の水分散液とリン酸オレイルを溶解させたトルエンを用い、界面での反応を試みた。室温で界面を保ったまま反応させると、二酸化チタンナノ粒子の水分散液が徐々に透明となり、トルエン層は徐々に透明度が低下した。8時間反応させた後には、二酸化チタンナノ粒子の水分散液はほぼ透明となった。トルエン層から固体を分離し、洗浄して生成物とした。赤外分光分析と固体高分解能核磁気共鳴分析の結果から、リン酸オレイルが二酸化チタンナノ粒子表面と反応していることがわかった。また、生成物は、トルエンに再分散させることができた。トルエン分散液のDynamic Light Scatteringの結果から、ナノ粒子が大きな凝集体を形成することなく、表面修飾が進行していることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナノ粒子とナノシートの作製並びにその表面修飾技術に関して、これまで多くの技術を獲得してきた。こうした技術を自在に駆使することにより、目的とする元素ブロック高分子の作製に到達できると考えている。 ナノ粒子の作製については、鉄酸化物についてはマグネタイトナノ粒子の作製に成功しており、現在その粒径制御を試みている。今後元素ブロック化に展開できると考えられ、機能性元素ブロックの作製に向けて推移してきている。 ナノ粒子に関しては、ホスホン酸やリン酸エステルを用いた表面修飾技術に関して様々な修飾剤を用いて検討を行ってきており、2015年度は2種類の修飾剤を用いた修飾方法が有効であること、仕込みの比率にほぼ対応した形で表面が修飾されることも見出している。これは、重合可能な官能基数の制御に対して重要な知見と考える。また、すでに表面開始原子移動ラジカル重合にも成功しており、高分子鎖の導入と末端への導入が可能となっている。 一方、ナノシートに関しては、ナノシートの連結に向けて、反応性官能基をナノシート表面に導入し、低分子化合物や高分子化合物の固定に関する基礎的検討を行っている。また、Liquid-phase deposition法を利用した重合性官能基を有するナノシートの作製についても成果が出てきている。さらに、表面開始原子移動ラジカル重合にも成功しており、高効率な重合に向けて条件の検討を行っている。 このように今後ナノ粒子やナノシートを連結させて高分子化するための準備は十分整ってきており、2016年度に向けておおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究を継続しつつ、元素ブロック高分子のモノマーとしての機能を有する元素ブロックの作製に主眼を置いて研究を展開する。また、元素ブロックの高分子化について検討を行う。ナノ粒子の作製、ナノ粒子やナノシートを用いた元素ブロックの作製、元素ブロックの連結手法の検討を実施する。 遷移金属酸化物ナノ粒子の作製をピリジンN-オキシド等のアミンオキシド化合物を用いた酸化によって合成する。様々な遷移金属ハロゲン化物を利用し、酸化物ナノ粒子の作製を試みる。 ナノ粒子に関しては、クリック反応を利用した粒子の連結に向けて、最終的な検討を行う。クリック反応は特定の反応に限定せず、またできるだけ効率的に反応する条件を探索する。クリック反応しない修飾剤を共存させた表面修飾により反応点を制御し、可用性を有する元素ブロック高分子の作製を目指す。また、立体的な制約を排除するため、表面開始原子移動ラジカル重合で制御した高分子鎖を導入し、末端を変性させることにより、反応性官能基を導入し、さらに高分子化することにより、元素ブロック高分子の作製を目指す。 上述のナノ粒子に関する検討に加えて、層状化合物から剥離させることによって得られるナノシートを用いた元素ブロックの作製についても引き続き研究を進める。有機ホスホン酸を用いたイオン交換性層状ペロブスカイトへの重合可能な有機基の導入においては、選択的な重合性官能基の導入を試みる。また、Liquid-phase deposition法を利用した有機ホスホン酸ジルコニウム作製では、重合性の有機ホスホン酸と不活性な有機ホスホン酸を用いることによる反応サイトの制限を試みる。その後各種有機溶媒で超音波処理を行い、剥離により得られたナノシートのコロイド溶液に対して、各種クリック反応による高分子化反応が進行するかどうかを調査する。
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